嗚呼、お前の名はロイヤルコーチマン 〜後編〜

初めて巻く記念すべきフライは

ロイヤルコーチマン

でなくてはならない!!

鼻息も荒く挑むOSSAN。果たして結果はいかに!?

  様々な内省とワクワク感、支払いの不安と完成する愛しいフライへの期待にを膨らませ、OSSANは店を出ました。

買い求めたマテリアル(材料)は小袋、少量であったり、ハックル(綺麗なニワトリの羽のことですな)に至っては初めて見るその値段に恐れおののき、妥協してインド産にしたり。

収入に見合う、慎ましい買い物に徹したものでしたな。

それでも我がフトコロには大打撃、数万円の出費でありました。

しばらく奥さんにはこれらの買い物のことは隠しておこう;;

だって、いきなり鳥の羽なんぞ買って帰ったら

「どうかしてしまったのかしらこの人?」と訝しがられるに決まっとりますからな。

更に値段のことはトップシークレット扱いです

帰りの電車の中で決心する小心者のOSSANでしたな。

心地よい紙袋の重さに頬が緩み、すれ違う人々に見咎められ余計な視線を集める事のないよう。

またちょっとした行き違いで通報等されないよう、努めて平静を装い我が家にたどりついたのでありました。

パッケージを一々開けてゆくのももどかしく、傍らに通販で手に入れたフライの巻き方の教本、フライタイイング動画を見るためのMacBook、買ってきたばかりのツール類をセットして厳かな気分になりつつ、万全の体制でOSSANは挑み始めましたな。

ふんふん、針に糸で下巻きをしなければならんのね。なるほど、おしりの方から材料を巻き止めていくのね。

順調順調。何しろOSSANは小学生の頃、相当な数のウォーターラインシリーズ作ったもんね。(←ご存知?)手先の器用さには自信があるもんね。

ウンウン、やっぱりレッドのワンポイント可愛いですな。そんでこの白い羽を左右で同量切り出し針の上に載せて二枚とも

”キュッと”・・・・

あれ??

  いかんいかん、力が入りすぎたかな?羽がちとブサイクになってしまった。

曲がってしまった。ボリュームもおかしいネ。これじゃイカンねw

少し羽が割れ気味でも有る・・・やり直そう。

うん、そうそう、大事な記念すべき第一号だかんね。ここはケチらず新たに羽を切り出して綺麗にそう、

”キュッと”・・・・・

・・んんん〜??

  ・・・ハハ、どうもイカンね。何にしても初めてなんだから、ちょっと何か手順でも間違えたのかなwそれともコンディション良くない羽買っちゃったかな。

あのにーチャンめ、今度行ったら嫌味の一つでも言ってやろうwwまあ、今日は機嫌が良いからねワシ

良さそうな部分選んで新しく切り出した羽使っちゃうもんね。

二枚重ねてふんわりと支えて、真っ直ぐ針の上に来るように気をつけて細心の注意力と愛情とついでに好釣果のお祈りを込めちゃったりなんかして。さあ、

”キュッと”・・・・・

 

 

・・・!!

 

 

・・・・!!!

ぬぅおおぉおおおぉ・・・!!

何じゃコイツめは〜〜〜!!?

 

何でウマい事くっつかんのじゃ〜〜〜!

キサマのような素直でない奴はこうじゃ!

こうしてくれるわ〜〜〜〜っっ!!!

(グリグリグリ・・・!)

ハァハァハァ・・・・・

・・・・  ええ、 出来上がりましとも。

相当のコストと時間とエネルギーを費やして目指した、美しく可憐で、可愛らしくもどことなく気品があり、その姿をして見る人を引きつけてやまない歴史と伝統、数々の逸話に彩られたその名も高き・・・・

ロイヤル・コーチマン!

1st royalcooachman_00001

自責の念を込めて残しておくのであります;;

・・・ぜんぜん違う・・コレぢゃない・・・!

OSSANの作りたかったフライは、こんなんじゃない!!!

我が人生で、1289番目くらいに大きな挫折感を味わうハメとなったのでありました。

その後色々知識を増やしていくにつれ、最初に制作するフライにR・コーチマンを(←既に訳してますな;)選んだことは、

無謀以外のナニモノでも無かった

ということを知りましたな・・・。

そういうこと誰か先に言っておいてくれなくては困るじゃないですか・・・;;

所謂クイル・ウィングを持つフライはその羽根を美しく固定するのが至難の技であると。

今では多少まとも(?)なバランスで巻けるようになったのですが、やはり極度の集中を要します。

サイド・ワインダーなぞと、写真を拝見するだけで「あ、コレ無理w」とヘタレてしまう代物もあります。

いつの日か、あのようなフライを美しく巻いてみたい・・と思いつつ手抜きをしてウィングをADW(白い人工中空繊維)なんぞでこしらえてしまったりする日々を送っております。

しかしあの日あの時。

OSSANは身悶えながらも地平線のように遠く広く、海のように深い

フライ・タイイングの世界

と、 引き返しようのない第一歩を踏み出してしまったのでありました。