60/40 クロス WALRUS (ウォーラス)マウンテンパーカー讃歌

ゴアテックスなど、高機能透湿性防水生地素材の登場によってあっという間に駆逐されて行ってしまったファブリック。

その生地を使用したマウンテンパーカーというアウトドアジャケットが、その昔日本中を席捲した時代がありました。

皆さんは60/40クロスマウンテンパーカーというジャケットの存在をご存知ですかな?

このページに辿り着くような方々はもちろん知っておると考えてよろしいですかな。

ご存知でない方のために。

1965年、アメリカはカリフォルニア州で創業された「シェラデザインズ」と言うメーカーが1968年に縦糸にコットン約60%、横糸にナイロン40%を使用して編みこんだ生地、通称”ロクヨン”と言われるファブリックを使い、アウトドアジャケットを製造し大ヒットしたことがこの大定番商品を生み出す全ての始まりとなりましたな。

OSSANの生まれる少し前に誕生したこのジャケットはその後、全てのアウトドアシェルジャケットの原点となっていったと言っても過言ではないと思うのですな。

「コットンより通気性が良く、ナイロンより摩擦に強い」そんな生地ですな。

そしてこのアウターが日本で発売されたのは1975年。アメリカ同様、アウトドアシーンであっという間に支持を得たのですな。

OSSANがキャンプ遊びに目覚めたのは中学生の頃。80’s後半のことでありました。バブル経済華やかなりしこの時代、アウトドアブーム(笑)と相まってマウンテンパーカーは「街着」としてブレイクしておりました。

どの雑誌でもこの生地のウリ文句として「縦糸として編み込まれたコットンが水分を吸収し膨張、生地の密度を高めて水の侵入を防ぐ。多少の雨なら平気」的なことをどこでも喧伝されていましたな。

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シェラオリジナルタグのロゴ(の、うちの一つ)

(でもOSSANの実体験としてはそんな印象はなく、しっかり水分を含み、通し、時間とともにビチョビチョになり、乾くのも遅いなんとも言えない状況となりましたな。)

当時のOSSANたちは無謀にも2月〜3月等というおよそキャンプには不向きの辛い季節に好んで出かけて行ったものです。

キャンプ場に人がおらず、広大な敷地を自分たちで独占使用できる楽しさに夢中になっておりましたな。

その通いこんでいたキャンプ場では、夜間屋外気温はマイナス10度になる時もあったと記憶しております。当然、当時持っている街着ではボア付きも含め全く役に立ちませんでしたな。

吐いた息がず〜〜〜〜〜〜と白いまま流れていきます。

お風呂を借り、帰ってきてしばらくすると髪の毛の水分は先端で凍って針みたいになります。

焚き火を囲み、バカな話にうつつを抜かし、意味なく大騒ぎをし、見上げる夜空からは恐ろしい位の星々の瞬きです。

どんどん着こむ枚数を増やしても、せっかく自分の体温で温めた”空気の層”を風に持っていかれてしまい、寒いなんてもんじゃない!!

ようするに、今で言う”シェル”機能を持った上着の必要性に迫られました。

幾度か一睡もできないような辛い夜を過ごし、自然とマウンテンパーカーを買うことを決意いたしましたな。

中学生の小遣いではどう逆立ちしても当時のマウンテニアリングヤッケや、目玉が飛び出るような値札のついたダウンウェアや、徐々に頭角を現してきた、とても高価な新素材系ジャケットには手は届きませんのでな。

ブームの去りつつ有るマウンテンパーカーはOSSANの目にはお買得に映ったのでしたな。

そして、やっとの思いで手に入れたマウンテンパーカー。若草色の表地、カーキの裏地のものを選びました。そのメーカーは・・

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Walrus(ウォーラス)!!

 

 

・・・・・シェラデザインズじゃ無いんかい!!!

 

 

何度も言いますがOSSANはヒネクレてます。他の皆さんがシェラデザインズやノースフェイスを選ぶなら、それらを選ぶわけには断じてイカンのです。

いや、何で?と言われても困るんですがね・・・

ちなみにこのウォーラス(セイウチの意味)というメーカー。

詳細は忘れましたがシェラデザインズを創業したジョージ・マークスさんとボブ・スワンソンさんが「イチからやり直そう、俺たち!」と二人してガッチリと手を取り合い、何故か北太平洋に沈む夕日を眺めながらナニゴトか誓いつつ(←勝手な想像です)1984年に新たに立ち上げたブランドですな。

現在は当時憧れのテントメーカーとして日本でも勇名を馳せたMoss tents等と同様、REIやMSRに買収されてなくなってしまっていますな。(号泣)

ですんで、

「知名度はイマイチかもしれないけど、その血統は紛れも無く本物」

という実に実にOSSAN好みのブランドであったわけですな。

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背面のブランドタグの下に、こんなメッセージタグがついています。

THIS JACKET IS A PRODUCT OF THE ORIGINATORS OF THE”60/40″ PARKA

(このジャケットは”60/40″パーカを創った人達の生産品です)

GEORGE MARKS           ROBERT SWANSON

ね、ソソるでしょう??

ロバートと言うのはボブの本名だそうで。とにかく、初めて手にした時の印象はよく覚えてますな。

縫製、生地のパターニング(て言うのかな、縫い目をどこに持ってくるのか。)ヘビーデューティな印象。ボタンは全てセイウチの顔が型押しされており、内ポケットもしっかりしたファスナー付き。

「よくできてるなあ〜」と・・

こいつを手に入れてキャンプはもちろん、街着としてもスーツの上に羽織ったり。

下に着る中間着を調整しつつ常に超ヘビーローテーションされることになったのでしたな。

積雪数メートルの2800メートル級春山に着て登ったこともありましたな。今思えば無謀です。

(防寒性はほとんど無いと思って間違いないです。良く無事だったもんだ;;)

もうね、本当にメチャクチャ気に入っておりました

肌触り、着心地、焚き火から火の粉が飛んできても焦げない。フードの中にクルクルっと丸めてザックに入れておける。人混みでも目立つカラー、突然の雨で使用したフードからの視界の良さ、何と言っても絶妙な通気性。

真夏以外ずーっと。着るほどに体に馴染んでくる。なついてくる生き物のような感触・・・・

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でもね、そろそろ引退させてあげなければならないようですよ。

 

表面、特に生地の凹凸の激しい部分に長年刷り込まれた汚れは洗濯ではもう落ちない程に黒ずんでしまっています。

縫製糸にはまったく問題は無いのに、あちらこちらの生地が部分的に裂けて来ました。袖のベルクロ部分は顕著にすり減っておりますな。

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OSSANはめったに服を買いません。

その代わり買うと決めたら(最近は)金に糸目を付けません。

”自分がほしい機能。気に入るスタイル。何かビビッと来るインスピレーション”。これらが全て揃って更に「本当に今必要?」というフィルターを通り抜けたものだけを買うことに決めているんですな。

季節がら〜流行の〜すてきな色〜等という動機で買い物をしたことは一切無いのであります。

そして手に入れると徹底的に着倒します。ヘビーローテーションします。

「毎日同じような服着てる」なんて言われても(ほぼ)気にしたことはありません。

でも、そのような服は滅多にはありませんから20代に戴いたり、買ったりしたTシャツなどもまだ引き出しに眠っていたりします。

生地が薄〜くなって穴があいてしまったものなんかもあったりしますがね、気に入った服をなかなか捨てられないんですな。

しかし流石に一番外側に着るアウターウエアとして・・・

「ほつれた袖口、破けて黒ずんだ生地はどうなのよ?」という状態になってしまいました。浮浪者然とした格好で子供とお出かけするわけにも行かないと・・・

自分は良くても周りはよく思わない・・・と。

そして、泣く泣く。

30年振りにマウンテンパーカーを代替することに決めたのであります。

今まで本当に有難う。

これからは丸められてクローゼットの奥へ仕舞われることになりますが、処分することはやはりできないですな。

もしかしたら人目を気にせずとも良いキャンプに着ていくこともあるかもしれないですしな。

そうだ、棺桶に一緒に入れてもらうことにしますな。

コメント

  1. Yoshihisa Shinomoto より:

    私は現在64歳。そうですね。いまから30年以上前でしょう「Walrus」のマウンテンパーカを購入したのは、もちろん今も現役で使っています。昨年、ポケットを引っ掛けて避けてしまったのを補修していますがね。それ以外はとってもいい状態です。
    記事を読んでおぼろげながら覚えていたWalrusの成り立ちを改めて確認できて嬉しかったです。
    これからも大事に着続けますよ。

    • OSSAN より:

      Yoshihisa Shinomoto 様、初めまして!
      なんと現役使用中との事羨ましいです。
      この記事をUPしてから丸3年が経ちました。様々なものの収納スペースを捻出したいと思いつつも、やはりこのMt.パーカを処分できずにいます。
      きっと今後もクローゼットに収まり続けるでありましょう。
      後継のエディバウアーもだいぶ馴染んできましたがまだまだですネ。
      60/40クロスが再ブレイクしないかな~と妄想している昨今であります。