頂いたBD-1には見慣れないクランクセットが取り付けられておりましたな。
頂いた方から受けた説明では
「蹴っ飛ばすと変速するらしい」
という、なんとも理解しがたいものであったのであります。
メンテナンスのためにBD−1をバラしつつ、このクランクに関しても調べておりました。
手がかりはアームにセットされたステンカバーに描かれた“Schlumpf”(シュルンプ)という文字だけでありました。
今更でありますが、インターネットというものは恐ろしいモノでありますな。
もしコレがなかったらこの機材については疎か、フライフィッシングについてもリアルな世界でのみの情報収集に頼らざるを得ないのであります。
何かに興味を持ったとしても、身の回りに都合よくそれらを聞ける同好の士がいるとは限りませんし、ピンポイントに欲しい情報が得られるとも限りません。
しかし現代はブラウザの検索窓に手がかりとなるキーワードを入力すれば、関連するだろうと思われる情報が勝手にリストアップされるのでありますな。
後はそれらの方法や取捨選択のスキルを高めていけば良い・・・。
大きな本屋にわざわざ出掛け、様々な誘惑に抗いつつやっとのことで関連する物を見つけて購入して来ても必要な情報は希薄であったり。
民間伝承や日本各地の文化等に興味を持った小学生時代には、図書館へ缶詰になったりも致しましたが、それらは既に非効率的なアナクロニズムと言えるかもしれません。
逆に現代においてそのように時間を使えるのであれば、それは贅沢な楽しみと言える事なのかもしれませんな。
そうしてつい先日、また近所の本屋が閉店しました。
ん〜・・・どんどん脱線しますな。問題はこのメカなのであります。
方々検索してみた結果、これはシュルンプ社というスイスに本拠を置く、もともとは水のくみ上げポンプを製造していた会社が開発したギアであるということが分かりましたな。
一輪車に乗ることが趣味である、そのメーカーの跡取りが
「なんで苦労してクランクを回しているのに一回転分しか進まないんだ!!!」
(スイスですからネ。勾配のキツさは推して知るべし・・・)
と言う、何とも根源的な不満を抱いてしまったがゆえに考え出されたものなのだそうです。
ポンプメーカーの跡取りがその後を継ぐこともせず、一輪車への情熱に驀進する様と言うのもなかなか興味深い状況でありますが、実際にソレを形にしてしまうんですから並みの動機ではなかったという事でありましょう。
このギアの働きを平たく言いますと、クランクを一回転させると、チェーンリングが1.65回転してしまう。というものであります。
等倍速のギア比でも使うことができ、
クランクの軸を左右からカチッと押し込むたびに、ギア比が1:1⇔1:1.65と切り替わる
のでありますな(ギア比のバリエーションも3種ほどあるようです)。
現代のスポーツ自転車において、フロントギアの歯数変更機能を担っているのは、外付けされたディレーラーによって異なる歯数のギアへチェーンを脱線させる機構が一般的でありますな。
対してこのスピードドライブは、内蔵式の遊星歯車機構(WIKIへ)を用いてギア比の変更を行います。
ネット上で見つけられた国内情報は軒並み10年位前のものばかりでありましたので、現在も販売されているのかはわかりません。
日本の元締め代理店は以前、サスペンションスプリングを調達しに行ったサイクルハウスしぶやさんのようでありますな(読み物としての経緯が楽しかったので貼っておきます)。
当時は作業工賃含めて7~8万もかかったと言うのですから驚きであります。そんなコストをかけるなら、高級パーツはより取り見取りであったと思うのであります。
富裕な方からの頂き物であったと言うので「なるほどな・・・」と言うところでしょうか?
ある程度走って来ましたので、この機構のメリット・デメリットを(想像も含め)整理してみますと・・・
メリット
- 外装式に比べ、フロント用のシフター、ワイヤー、ディレーラーが必要ない。
- そのため見た目がスッキリする。
- それらが折り畳み時のメリットにもなる(自分は頻繁に折りたたむような使い方はしませんが)。
- フロントシングルである元の状態に対し、選択可能なギア比の幅が増える。
- フロントのギアは一枚なのでチェーンラインに無理が少ない。
- 構造的にすこぶる頑丈(らしい)。
- 「変なものがついている」という、変な満足感があるww
等でありましょうか。
デメリットもありますな。
- 重い(自転車でコレは・・)。
- フリクションロスはどう考えても大きいはず。
- クランク軸が広く、くるぶしに当る(Qファクターも広がる)。
- 人体の自然な動作に即した変速操作とは言えず、やりにくい。
- 高価である(もらいモンだけど)。
- 整備に専用工具、知識が必要。
- BBメンテとかどうすんの?
あたりでしょうか。
3については幅の広いフラットペダルを導入して足の置き場の自由度を広げたことで、ある程度は解消しましたな。
しかし5の問題はちょっと困っております。メンテの為にバラしてしまうと元に戻せる気がしませんな。
なので、現状はグリスホールから注油するだけに留めております。
頑丈であると言うことを信じて、必要になるまでは工具を取り寄せようとも思っておりませんが、それまでにこのBD-1自体が寿命を迎えるかな?
そうであってほしい。とも考えておる、微妙な心境なのであります。