この素晴らしい季節。
我が勤め先は何の事前相談もなく、週末に連休を組んでくれましたな。
基本的に釣りに出かけるのは平日と決めているので、有難迷惑も甚だしいのであります。
これは平日の連休となるよう、各所へ調整及び根回しをするしかあるまい・・・
そのように思い始めた矢先、その週末に行われるというイベントを見つけてしまいましたな。
里見栄正 フライフィッシングスクール in 風来坊
であります。
里見さんと言えば、言わずと知れた日本FF界のビッグショットであります。OSSANのようなインチキ極まりない者でも存じ上げている位の方なのですよ。
そのような方に二日間にわたってFFの何たるかを学びつつ、夜は小洒落たペンションで地酒と美味い肴を堪能しつつ釣り談議に花を咲かせ・・・なんと贅沢なことでありましょうか。
偶然とは言え、こんな機会は滅多に巡って来ません。
テクニック以外に得られるものだって、きっと膨大なものとなるに決まっておるのですな。
しかしそのように前のめりで確信してしまうわりには、それが何であるのかは分かりません。
皆様もそんな事ってありませんか?
行ってみるしかないではないですか!
と言うわけで。
やってきました、福島県は裏磐梯。
体力の配分を考慮して、贅沢にも前夜乗りといたしましたな。
バスフィッシングや家族旅行で訪れた記憶はありますが、フライフィッシング目的では初めてであります。
仕事が捌けてからの長時間運転も豪雨に見舞われたりとなかなかに疲れましたが、到着してから重大なことを思い出してしまいました。
そう言えば俺・・・コミュ障だったw
すでに食堂では皆さんお揃いなのであり、スクール・リピーターの方がほとんどで、夕餉を前に和気藹々な様子です。
そこへ紛れ込んでいくには、かなりの勇気を必要としたのでありました。
しかしFFスクール参加という、同じ目的のために集った「フライフィッシング好きな同志」でもあるわけで。
しどろもどろの自己紹介をこなした後は、人の3倍のペースで(誇張でなくw)よく冷えたビールを煽り、皆さんの気遣いに助けられつつ夜が更けていったのでありました。
さて、スクール初日です。
早朝の宿外にて里見さんとお話ししていると、どうも自分の車で今日のフィールドへ向かうのは難しそうである・・ということがわかりました。
林道の浸食が激しく、露出する岩で車の腹を擦ってまう。最悪、スタックしてしまう可能性があるというのです。
急遽他の方の車へ乗せて頂いて(林道最強ジムニー!)、無事フィールドに立つことができましたな。
ここ数日の傾向もあって天候の崩れを心配しておりましたが、うまく雨の隙間を突くことが出来たようでありました。
惜しみなしに降り注ぐ6月の陽光に、川面も木々の葉も山肌も遥か高空も、早朝から全てが輝いておりました。
いつもはここから汗やら涙やら、色んなものを垂れ流しつつ体力を振り絞ってガシガシと遡行が始まるわけですが、今日はスクールですからな。
初フィールドとは言え、沢山の人がいるので遭難する心配もありません。怪我にだけ気をつけつつ、FFに集中するだけでいいのであります。
ゆったりとした、何とシアワセな休日でありましょう!
スクールは
- 各々普段のキャスティングを見ていただく。
- 全般的キャスティング要点等の解説。質疑応答。
- 思い思いのポイントへ散って実釣。
- 各人のところへ里見さんがやってきてアドバイス&コーチング
- それを元に各人復習・実釣。
途中お昼休憩を挟んで、そのように進行しましたな。
まぁそれにしても、①は緊張しました。里見さんは言うに及ばず、圧倒的に自分よりFF歴の長い方々の前でキャスティングしなければならんのです。
運悪く(?)トップバッターとなってしまったので、「よし、大勢の前で魚釣っちゃおうw」などと助平心も少々働いて、
ブンブンブンブン! ぅどれぇヤァ〜!!
いつも通り出鱈目にロッドを振り回し、ポイントにフライを流すことに集中してしまいました。
おそらく皆さん「うはwwとんでもねーヤツ来た・・・」と呆れていたのでは・・と確信しております。
しかし広々とした中規模渓流とはいえ、これ程の人数で釣りをするのも初めての経験でありましたな。
他参加者と離れるため、指定されたエリアの最上流まで一気に移動した後、実釣に移行しました。
先に解説されていた要点を思い出しながら、自分のキャスティングに反映させてみようとしますが、数年にわたって染み付いた自己流がそう簡単に修正できるはずもありません。
まして流れるパラシュートフライに「チョボっ」などと反応が出た日には、つい「魚を釣ること」に集中してしまうのであります・・・
「ア、ほんとに釣っちゃった。最高の季節に初めて来る素晴らしい渓で、ウレシイなぁ!!・・・いやいやチョット待て、今日はスクールに来てるんだから、もっと真面目にストイックに、ちゃんと自分の釣りを見直さなければならんのだ。それこそが今回の大目標なんだからな。魚を釣ってホクホクしてる場合ではないのだ。イヤ、でもほんとに綺麗な山女魚だなぁ!コンディションも引きも素晴らしいなぁ!でもコレ、さっき反応したやつと別の魚だよなぁ?あそこにいる魚はパラシュートよりCDCの方がキマリそうなんだよなぁ。フライチェンジしてみるか・・だからダメだってば!!さっき里見さんも「釣りに集中しすぎないようにw」って言ってたじゃないか!? イヤ〜でもこのヤマメ可愛いよなぁ!!」
・・・そのような楽しい逡巡に苛まれているうちに、里見さんがやって来ました。
たくさんのアドバイスとキャスティング動作修正点の指摘等もいただきましたが、残念ながらそれを今、詳にする事はできません。
自身の中で消化できていないことや出来ない事が多すぎて、うまく伝えられそうにないからであります。
OSSANのタックルを里見さんが扱うと、自分が今まで行ってきたキャスティングは何だったのか!?と思えるほどに力を要しておらず、それでいて澱みのないタイトなループが展開します。
ロッドは生き生きと仕事をしている様子に変わり、フライラインから先へのパワー伝達もしっかりと行われてコントロールされていることがわかります。
リーダーからティペットはドリフトに必要十分のスラックを確保しつつ、フライは「そうだよなその場所だよな」というポイントにフンワリと「置かれる」のです。
そしてフライの自然なドリフトが始まる前に、流れにラインなどがドラッグされることもありません。
あれが出来るようになれば、多くの場面でとても有利になると言うことが確信できます・・・!
もうネ、目が点になってしまいました。
ヤベぇ・・ 里見さんやべぇ!!!
これが日本FF界・第一人者のキャスティングでありドリフトなのです。控えめに言って、OSSANは感動してしまいましたな。
「あ、ライズしましたね! ではあれを釣ってみましょう。」
コーチングを受けている目の前のポイントで、小さなライズが起こりました。
厚みのある流れの上流から、練習で使っていたそのままのパラシュートフライを流しましたな。
薄く削ぐようなアタックに運良くフッキングが決まり、小さな岩魚を手にすることができました。
わかりました。もう十分なのですな。
OSSANはあのような技術をモノにして、今まで出会うことの叶わなかった魚の待つフィールドへ向かわねばならない・・・
フライフィッシングの、更なる先へ進まなければならないのであります!
午後も魚からの反応があると「獲るための釣り」に戻りがちでしたが、努めて教えて頂いたことを反復したり、皆さんの釣りを遠くから眺めて過ごしましたな。
各人各様、それぞれに個性ある釣りをしているように思えます。
当然ながらその全てが自身より上手に見え、少々凹みながら初日のスクールを終えましたな。
終了間際に数投だけ、ウェットフライも流してみたのは里見さんには秘密なのであります。
宿へ戻って熱めの湯船でサッパリした後は、お楽しみの夕食でありますな。
今回お世話になった「おやど風来坊」さんは、物静かな内に細やかな気配りの旦那さんと楽しく快活な奥様の切り盛りする、ワカサギ釣りとフライフィッシング好きの集まる裏磐梯のペンションでありますな。
甘えん坊で可愛い二頭のワンコもいます。
標高の高い自然に囲まれた周辺環境はメルヘンチックに美しく、ペンションの立ち並ぶ地区全域で修学旅行生たちの受け入れもあるそうです。
しかし本筋はやはり「釣り宿」としてのようで、敷地にはワカサギ釣りの艀(正式には何て呼ぶのでしょう?)が何艘も置かれていましたな。
夏等はそれをライダースハウスとしても活用しており、当日も日本一周ライダーが宿泊しておったようであります。
気分の良い宿に数日間も腰を据えて、方々の溪へ出撃する・・・憧れますなぁ。
次は平日を狙って、ふらっと立ち寄ってみたいと思っております。
華やかさは無いものの、口へ運べば何やらしみじみと旨い料理を堪能しつつ、グイグイとビールを干していきます。
今日の釣り明日の釣り、海外の釣りいつかの釣り・・・
あの淵で逃した岩魚はデカかった。この季節はあの辺りでガボッと来る、クマ対策はどうしている、山菜はどうだ、そんな時はこうすると良い、次はあの辺へ行ってみるつもりだ・・・
里見さんを囲み大勢での釣り談義もそれは楽しく面白く、ずらりと並ぶ地酒たちの誘惑を退けるのが困難なほどでありました。
見ず知らずの人々がこのように交流できるのは、フライフィッシングというニッチな趣味を(プロがいらっしゃいますがw)共有しているからこそですな。
釣りというメジャーな趣味の中において、超低空飛行を続けていると言えるだろうフライフィッシング。
いざ覗き込んでみると、底なしの深さに足がすくむ思いがいたします。
でもワタクシは、この釣りを始めて本当に良かったなぁと思っておるのですな。
二日目。
OSSANはほとんど、魚を狙っての釣りをしませんでしたな。
前日と同じ区域へ入ったので、もう自分に釣れるイージーな魚はいないだろうと思ったからであります。
残りの時間一杯、広々とした堰堤下でロッドを振り回しておりました。
ロッドへの入力の仕方、それによるラインの反応や軌跡、手首の動かし方やリーダーやティペットへ現れる変化。
目の前を流れる川ではなく、記憶の中の手を出せなかった流れや苦手なシチュエーションで、教えてもらった方法がどのように役立つものかをイメージトレーニングすることを続けていたのであります。
里見さんやオーナーさんには奇異に見えたに違いないですな。再びいくつかのヒントをいただいて、スクールは終了となりました。
正直、今回のスクールで何事かをマスターできた・・などということはありませんでしたな。
しかし自分なりの何を為さねばならないのかは、少〜しだけ見えかけてきた気がしておるところであります。
そしてFF好きの方々と一つ宿で交流できる楽しさは、大変嬉しいものでしたな。
OSSANは幾度かお会いしないと、お名前とお顔を一致させることのできない愚物でありますが、お陰様で楽しいひとときでありました。
講師である里見さんはじめ、この機会を作っていただいた風来坊オーナー夫妻、お車に同乗させていただいた皆様にも改めてお礼申し上げます。
己のフライフィッシング趣味において、今のタイミングでスクールに参加したことも良かったと思いましたな。
初期に過ぎれば何がナニやら・・でしたでしょうし、自分で考え工夫する機会を失っていたかもしれません。
逆に後であっても、更に沢山の無駄なエネルギーを費やしてジタバタ悶絶していたのだろうとも思うのです。
まぁFFにおいて「絶対にコウでなければならない!」ということはないのだと思いますし、もしそう言われたら、自分の性格的に反発する気もします。
遠回りすることも含めて面白いFFですが、やっぱりカッコよくスマートな釣りを目指したいじゃないですか?
そろそろ出かける先々で、息も絶え絶えにドボンしている場合じゃない気がしますw
里見さんは各地のスクールで、お持ちの技術(フィールドで武器となるもの)の一端を、個々に合わせてレクチャーしているに過ぎないのだと思えましたな。
その出立ち、様子の何とスマートなことか。
願わくばこれからの悶絶の先では、ワタクシもあのようにありたい。
梅雨空の街で、そのように考えておるところなのであります。
コメント
OSSANさん♪
おやど風来坊女将「元気&笑顔全開担当」yurikoです。
里見フライフィッシングスクールin風来坊!ご参加頂き、ありがとうございましたぁ。
また、blogにもupして頂きありがとうございます。
みなさんのおかげで楽しいスクールになりました、改めてありがとうございます。
こちらにお越しの際は、是非お声をかけてくださいね。
我が家の風来坊!すぐに風来坊に変身してご一緒に川へ(笑)
これからもよろしくお願い致します(ぺこり)
yuriko様、こんばんわ。
その節は大変お世話になりました。
大変楽しい時間を過ごすことが出来、感謝です。
またそちらへ伺う事もあろうかと思います。旦那様にもよろしくお伝えください。
その際は取って置きの地酒をお願いしますね^^
おつかれさまでした。
やっぱりエキスパートに直接おしえてもらえるスクールは上達への近道ですよね。
福島の美味しいお酒もうらやましい!!
おはようございます。
百聞は一見にしかず…
まさに、「匠の技」なのでしょうね^^
貴ブログを読み、ぜひ見てみたい…と思いました。
流れのどこを狙い、どう落とすのか?
撃つ順番は?
でも、一人で一泊二日に参加する勇気がありません^^;
私も某有名プロ(里見プロともよくコラボ?されている)のタイイング講習に行ったことがありますが、常連さんばかりでビビりました(^_^;)
初見で単身参加の私にとても気を遣ってくださり、そのお人柄に触れる機会になりました。
いただいたいくつものフライは、今もタイイングのときにお手本にしています。
windknot様、お早うございます。
この経験をしっかりと活かせれば良いのですが、只々楽しかった思い出だけが残りそうで、ある意味不安になっていますw
再び彼の地へ行った際は数々の地酒のレビューを・・・酔っ払ってしまって絶対無理そうですね^^;
しげ様、お早うございます。
見て、聞いて、尋ねて、実地で教えていただきやってみて、結局はできないのですが、多くの発見や気付きを得られる機会となりました。
やっぱりWEB上の動画等を見る(最近見始めましたw)のとは、情報量が圧倒的に違うと思いました。
でも失敗しましたね・・・
フライを一本、里見さんにおねだりすれば良かったです^^;;
OSSANさん、有意義な時間を過ごされた様で何よりです。
長い事、この遊びをしていますが、私も我流を通して来た事もあってプロのテクニックがどの様なものなのかは興味があります。ただブログに書かれている様に、染み付いた動作を学んだ通りに修正するのは自分には難しそうです。(^^;
私もフライフィッシャーが経営するお宿に何度かお世話になっているので、オーナーやそこで偶然出会った釣り人との釣り談義は楽しいものとして記憶に残っていましたから、この記事を見て懐かしく当時の事を思い返す事が出来ました。有難う御座います。
OSSANさま
大変ご無沙汰しておりますm(_ _)m
最近は、嫌な流行り病のせいで思うような活動が出来ず、悶々とした日々を送っております。
釣りの方もさっぱりで、年に数回の釣行がやっとといった体たらくでございます。
さて、風来坊さんでの里見さんのFFスクール。
私もいつかは参加したいなぁと思っているスクールでして…。
OSSANさまのブログを拝読し、その気持ちを新たにしたところです。
いつもながら、OSSANさまから良い刺激をいただきました。
これからのシーズン、頑張って、楽しく釣りをしたいと思います(^^)
sasuraiflyfisher 様、こんばんわ。
スクールも、宿でFFの話ができるのも初めての経験で、とても楽しい時間を過ごすことができました。
我流FFで楽しんでいる方は、世の中に沢山いらっしゃると思うのです。みんながみんなプロに習わなきゃいけないなんて思いませんしね^^;
しかし今回教えていただいた様々なことが、実際のフィールドで有利となることが理解できました。
思い通りにフライを流せないことはしょっちゅうなので、その結果出会えない渓魚が居るだろうことを恐れております。
今後赴くフィールドで、その一投ごとに取り組むべきことがあるのだと思えました。
修正ではなく、拡大と言いましょうか・・上手く言えませんが、新たな楽しみの発見でもあります。
そんな積み重ねの結果、将来的にカッチョイイ、スマートなアングラーになれていたら良いなぁ・・と思っておりますw
すぺっくるど様、お久しぶりです!
心配しておりました。この感染症動乱も随分長引いてしまいましたね。
私は相変わらず、このようにドタバタと悶絶を続けておりますが、少しづつでも上達していければと思っております^^;
もうこのような機会は巡ってくることはないだろうと、思い切って参加して良かったです。
タイミングが合うようでしたら、是非お出かけください。
きっと各々の練度や課題に応じたアドバイスをいただけることと思います。
世の中も徐々に戻っていくのでしょうから、どうぞ焦らず無理せず、ゆるりと参りましょう^^