興奮を思い出しつつ書き募ってみれば、文字数7Kを超えるページになってしまいましたな。
5月末の本谷釣行を書いていきます。お時間に余裕のある時に、お付き合いいただければ幸いであります。
細かな時間を見つけてはロードバイクを汗みどろになって漕ぐことで、日々の鬱屈を紛らすルーチンが確立されつつあります。
ですが本来の目的はそれだけではないのでありますな。
あと幾度、感じる機会が残されているのか、全方位的に素晴らしい日本の5月。
釣りに出かけねばなりません!
今年中に、是非出かけたいと考えていたエリアがあったのであります。
さんでありますな。
群馬県多野郡上野村楢原。
上野村漁協さんが運営する完全予約制のフライ・テンカラ専用キャッチ&リリースエリアであります。
♡かんぜんよやくせい♡
良い響きでありますな・・・
この言葉を聞くと量販店のスーツではなく、とっておきのアクア・スキュータムを引っ張り出さなくてはならない気になります。
貰ったは良いが趣味でもないので仕舞い込んだままになっている、ン年物のBVLGARI を身体に振りかけなければならないような気もしてきますし、必要にはならないと思いつつも財布をパンパンにしていかなければならない気持ちになってしまいますな。
しかも新品のパンツを下ろさなくてはいけない気がしますし、髭を剃るには電気シェーバーではなくT字髭剃りを使わなくてはならないような気もします。
どんどん脱線して行ってしまうのでもうやめますが、フライ・フィッシングエリアの話なのであります。
このフィールドは神流川・本谷、中ノ沢という二本の流れを各7つにブロック分け、一日の入渓者を基本14名までに限定して営業されておるということであります。
禁漁期もしっかりと設けられ、様々調べていきますとなかなかの大物も期待できるエリアであるとの事・・・!
今回、ブログ経由でお誘い頂いたS氏にそのポテンシャルを前もって吹き込まれていたワタクシは、既に前夜の夢の中で40㌢級の岩魚を釣り上げております。
初めて訪れる群馬県・上野村。
数日前からやきもきしていた天気予報は見事に外れましたな。日差しの眩しい一日となりそうであります。
幾度か味わった、初めての渓を林道から覗き込む時のこの高揚感を、どう表せば伝わるでしょう?全く見当がつかないのであります。
微風が渡る梢越しに見下ろす本谷の深みには、大物が泳いでいる様子がありありと見て取れます。
背骨の硬そうな泳ぎ方(おかしな表現ですな・・・)。悠然としつつもイザとなればその俊敏さを爆発させそうな様子から、山女魚であろうことが分かります。
逸る気持ちでウェーダーを履けば少々暑く感じられ、早くも額に浮かぶ汗を森の涼風が拭い去ってくれますな。
迫り出す腹に呻きつつシューズの紐を締めながらフト見ると、銀緑色に輝く小さな甲虫が這っています。
揚羽が舞い、辺りは濃厚で好ましい匂いで満たされています。嗚呼モッタイナイ、モッタイナイ・・・!!
汚れ切った肺一杯に深呼吸をしておきますな。
急な斜面をヨタヨタと辿り着いた、見るからに大物をストックしていそうな大堰堤を前にしたOSSANは既に鼻血が出そうでありました。
そしてこのフィールドを隅々まで知り尽くし、打合せのやり取りから道中までも、唖然としてしまうような知見を披露して頂いたS氏は追い打ちをかけるように、
「この季節、この時間、このコンディションで、この場所です。さあ、どうぞ!」
とおっしゃいます。
素人目とは言え水量、水況も悪くは見えませんし、大物との脳内ファイト・シミュレーションは万全なのであります。
努めて鷹揚な素振りで辺りを見回し、飛んでいる蜉蝣を観察するフリをしたOSSANは、確信と自信に満ちて出来の良さそうな#16アダムス・パラシュートを結ぶのであります。
もう色々と完璧すぎる一日のスタートに、これよりの佳き日は約束されたも同然なのであります!!
しかし。
賢明なる皆様におかれましては・・・お分かりですな?
釣れないんであります;;(号泣)
いやいやいやいや・・・あり得ないでしょう!
これだけの大場所(写真撮り忘れましたな;)で、そのようなことはあってはならないのであります。
この日の為に、どれだけのエネルギーを費やしてきたことか。
悪夢の〇連勤をやっつけて休日を調整し、ヘロヘロになりつつも釣り支度に胸躍らせ、細君からの疑惑に満ちた視線(ブログの存在は未だに秘密であります)を間一髪で躱し、今ここにようやく立てているのであります!
運転をはじめ、釣り場の予約からナニまでおんぶにだっこで連れて来て頂いたS氏に、せっかくのポイントを打たせて頂いているのであります。
ここで釣らないのでは漢が廃るというものなのであります・・・!!
しかし浮いてきた魚には見切られ、ライズがあってもフライから50㌢も離れています。
極限まで血圧を上昇させつつフライパターンチェンジを繰り返し、終いにはニンフのルースニングにまで及びますが敢え無く撃沈・・・。
今になって冷静に考えてみれば非常にOSSANらしいスタートなのでありますが、早くも心折れそうになってしまいましたな・・・
「釣れません・・・」
「ライズが少ないですね。先に行きましょう。」
「うぅ~;;」
「ココはまた午後に来てみても良いですし^^;」
燥ぎたつ川面は木漏れ日に輝き、今まで見たことのない、長い尾の美しい蜉蝣やセキレイも飛び交い、辺りは生命感で溢れています。
開けた流れとなっている中にいくつもの沈み石が見える大堰堤の上部に入りなおしましたな。
「ここやってみましょう。さあ、どうぞ!」
「あう、ハイ;;」
遠目から見ても、”この場所ならばあの辺に居なければオカシイ”と思えるチャネルが水中に通っているのが見えます。
出来るだけ下流から、フライを通したいと思うポイントを凝視しつつ距離を詰めるのですな。
こちらの存在を覚られない(と思っている)キャスト限界位置で、足と水流によって起こされる不自然な音の発生に、内心ヒヤヒヤしながらラインを繰り出すのであります。
きましたゾ。
2度か、3度目か。
”困った時のエルクヘア・カディス”に、神経質そうなバイトを見せてくれたのは予想を超えるサイズの岩魚でありました!
素晴らしい力強さであります。
今までその存在を意識すらしていなかったマイフェイバリット・カムパネラは、OSSANの手の中でもう一つの生物のようにブルブルと躍動しております!
初めて訪れる、どこを眺めても輝きに満ちる五月の渓。
ココゾと思い決めた流れの中で、満々と太く柔らかそうな横腹が、艶めかしく陽光を映し黄金色に閃くのであります・・・!!
嗚呼。
あれは正夢だったのでありますな!!
ぷっつん・・・・
ぅあああぁlaあbもmvないぉrgy@いおp!!
「ああぁ、惜しい~! 今のは良いサイズでした・・・。」
「・・・!」
”グラスの底まで飲み干してからその酒を語れ”という意味の言葉をどこかで読んだ気がしますな。
真剣な筈なのに、その喜びに呑まれてしまった。掛けたのみで、またもや捕った気になってしまったOSSANの負けなのでありました・・・。
そして更に、情けない面でS氏を振り返ったOSSANは見てしまいました。
美しい季節に煌く渓の上空を、見たこともない見事なフライライン・ループが踊っているのを・・・!!
こだわりのバンブーロッドから繰り出されるそれは、自他ともに認めるモグリのワタクシには決して真似のできない、美しいとしか表現しようのないものでした。
力を感じさせず優雅であり、それでいて意志は揺るがずどこまでも伸びやかに、大きめのフライを自在にコントロールしているのであります。
しばらくの間、阿呆のように口を開けて眺めていたOSSANは、思わず急いでカメラのシャッターを切ってしまいました(さすがにUPしませんが・・)。
そう言えば還暦を迎えた御年であられるという話であったにもかかわらず、腰が引けてしまうような急斜面をものともせずヒョイヒョイと下っておられましたな。
おいおいおい・・・;
絶対普通じゃねぇえぇ〜!!
(心の叫び)
ひょっとしてワタクシ、とんでもないお方と釣りに来てるんではないかしら・・・?!
「あっ、見ました?あの二つの流れの合流点の向こう。いま、良いのが見えました!」
バラシポイントからは程なく上流。
掘ってみたら何かの化石でも出てきそうな大きな岩盤の下。二本の流れが合わさって複雑な渦を巻いているポイントがありましたな。
実はこういうところは苦手です。
長めのティペットを扱うことのヘタクソな私は、流れのある場所でフライを一つ所に留めたり、ラインのドラッグをギリギリまで我慢する必要のある釣り方を避ける傾向がありますな。
「イヤ、そこが釣れるんじゃないか!」と言うことも頭では分かっているつもりなのですが、どうもネ・・・いつもであればすぐに沈める釣りに切り替えてしまうところであります。
ですがここは、これまでに経験したポイントの特徴の一つに合致していますな。
何処だったかは思い出せませんが(思い出したw)、この場所は”カディス”であります(他にないんかい!)。
根拠の怪しい確信と期待を背負った我が必釣のカディスは、数度目のキャストで一番苦手な渦と水流の向こうへ着水しました。
手前のラインはどんどん流され、もう数秒でフライは不自然な動きを強いられてピックアップせざるを得なくなってしまいますな。
魚がいれば当然、あのフライを見ているはずです。プレッシャーを高めてしまいます。
「あちゃ~。もうフライチェンジかな?同時に思い切りティペットを長くしてみようか・・・。」
短い時間の割にはそんなことを考えていたその時、唐突に出ましたな!
水面のフライに対して、大きな魚ほど上げる飛沫が控えめなのは何故なのでありましょうか?
そして早くも遅くも、弱くも強くもなく、無意識かつ自然なフッキング動作が決まった時はキャッチ率も上がる気がしています。
ですが先ほどの大失態もありますのでね、グイグイと引き絞ってくる歓びの手ごたえに口元も緩めず、断固として最後まで気を抜かないのであります!
数度のやり取りの後、ついに寄ってきたのは今までOSSANが見たことの無いようなイカツイ顔つきをした、見事な山女魚でありました!!
そしていざランディングに移ろうとした時、またもや事件であります。
「あ、ネットが無いですよ!?」
「ぅひゃぁぁ~!!」
フィッシング・ベストから今回使用のチェストパックへ、固定用マグネットを移し替え忘れてしまって居たのでありますな。
仕方なく朝からランディング・ネットを腰のベルトへ差し込んでいたのです。
それが、ない!!
どうやら屈んだ時にでも落として流されてしまっていたようなのであります・・・
た~す~け~て~;;
(とは言いませんでしたがね・・・)
S氏にランディングを助けてもらい、やっとネットに収まった魚体を見て身体が震えてしまいましたな!
お借りしたランディングネットの長径は33㌢との事であります。それを数センチ超えるほどの大物でありました。
このような山女魚をナマで見るのは初めてなのであります・・・!これが噂に聞く、ハイパー山女魚というやつなのでありましょうか?
この後しばらく、気持ちが上ずってしまい釣りにならなかったのであります・・・
山女魚は通常、2~3年ほどしか生きない魚と聞きますな。
それがこうして30㌢を優に超えて成長するということは、この渓の栄養条件を含め生育に有利な環境であるか、特別大きく育った個体を放流しているかのどちらかと言えそうな気がします。
これまで見てきた昆虫類の豊富さから言っても、前者であれば良いなあ・・・と思ってしまうのですが、さて・・・。
そんなこんなで、朝から幾度も魚とのファイトは楽しめているのであります。(その全てがなかなかのサイズの魚だったことを申し添えておきますゾ・・)
あまりの楽しさと難しさに、年甲斐なくどんどんヒートアップして行ってしまうのであります!
そして困ったことに、時間の経つのがいつにも増して早いのであります。
早すぎるのであります!
気が付けば13時を過ぎ、一度頭を冷やすためにもと、”道の駅・上野”でカレーを食べつつ小休止であります。
この施設は広々として上野村特産の十石みそ&いのぶた製品の他、地のものが沢山並んでいますな。タイミングが合えば、鮎の塩焼きも人気であるとのこと。
帰りの際には家人へのポイント稼ぎに、何らかのお土産を買って帰ることをおすすめいたしますなw
午後はブロックごとの専有が解け、”釣り上がりであればどの区間に入っても良い。”というルールに変わります。
何処を覗いてみても魚影濃く、いかにも釣れそうな様子の流ればかりでありました。
そこかしこを様々探っては見ますが、どうにも今日はリズムが合わないのでありますな。スッポぬけや、足元まで寄せたにもかかわらずキャッチできない事が多々。
15時には上がる予定でありましたが、しつこい性格ゆえの”まだ釣りたいんだもんね”テンションが抑えきれず16時すぎまで引っ張ってしまいました。
そして再び、あの尺オーバーを上げたポイントまで戻ってきたのでありますな。時間的にラストチャンスでありました。
相変わらず頼りっぱなしの#16カディスを流しますが、もう覚えられてしまっているのでしょうか?
複雑な水流に揉まれつつ、打ち返すたびに浮力を失ってゆく小さなフライは水面を炸裂させてくれる事はありませんでしたな。
谷筋に満ちていた陽光が、仰ぎ見る梢の端々に引っかかりつつも消えようとしています。
その大岩の襞に、木々の足元に、沈み石の影に、フックアイとティペットの先端に、白泡の一つ一つの粒の中に、私がこの世の中で一番キライなものが顔を見せ始めています。
フロータントの切れたカディスは、その力をもう完全に失いました。
浮かせる処置をする時間すら、もう残っていません。
わかっていますな。
この一流しが終わってしまえば、対峙するべきものが好ましくないモノに取って代わるだけであります。
沈んだカディスの流れているであろう脇、見透かせない水の中が鈍く閃いた気がしましたな。
無意識にロッドを煽ると、
ドスン!!
・・・・・!!
心ささくれ立つ報道や、理不尽と非合理で溢れかえるデスクや、取るに足りない小言などで、呼吸をためらう程の息苦しさと不安に満たされたあちら側から暴力的に引き戻されます。
虚ろになりかけていた身に洪水のような質量がなだれ込んできます。
コントラストの希薄になり始めた眼前の景色が再び、電流に満たされたかのように身震いし、その色彩を取り戻します!
愛竿をバットから四方に引き回すそのスピードは間違いなく尺オーバークラスの山女魚でしょう。
最後の最後に、またもや千載一遇の大ヒットであります!
「これもデカい!」
「ヤマメです!」
フッキングの手応えは十分でしたが、7Xのティペットでは心細くなるパワーとスピードであります。
長期戦を覚悟したOSSANは慎重を期し、ややもするとのされ気味になるロッドから少しのラインを送りましたな。
ですがその直後、何度めかの猛ダッシュを見せた魚影に対しラインはテンションを失ったのであります。
あぁ!外れたっ・・・
姿をこの目にしっかり捉えました。手ごたえも堪能できました。
しかし宝石に擬えられるその美しい魚体へ再びおずおずと触れ、深みへ駆け戻っていく時の水飛沫を浴びせてもらう幸せまでは許してもらえなかったのでありますな。
「いやぁ、良い魚でしたね・・・。」
いつもであればサイズはどうあれ、もう一尾。なんとしても手にするまで諦められなくなるところであります。
しかし濡れしょびれて戻ってきたカディスをパッチに刺した後、空を見上げてため息をつき終えたOSSANは、フライラインを急いで巻き取りました。
タイムアップであることも事実。
が、それ以上に何とも言えない心地よい感触が身の内に広がりつつあることを感じたからなのであります。
こんなに夢中になってフライ・フィッシングに向き合ったのも久しぶりな気がします。
更に粘って、今日のこの釣りを汚してはいけない気がしたのであります。
今のこの気持のまま、ベッドへ潜り込んでしまいたかったのでありますな。
再びS氏の芸術的キャストを眺めさせていただいたのち戻った林道には、未だ眩しい山間の午後がたっぷり残っておることも発見いたしました。
渓筋と比べると、時間が巻き戻ってくれたような感覚にもなるのでありますが・・・
結局、キャッチできた魚は一尾にとどまったのでありますな。しかし悔しくも、残念でもありません。
只々、充実した一日の感触だけが残りました。
この釣行は完璧に、円が綴じられたのでありますな。
梅雨入りが発表された重い空を眺めながら、作戦を練って居ます。
おそらく、次に上野村を訪れるときは爆釣です。根拠はありませんが間違いありませんw
さ〜て。
次は何処に出かけましょうかな?
毎度、毎度、スケジュール調整他諸々に苦労を強いられるのだとしても。
あんな一日が待っているのであれば、やはりコレはやめられないっ・・・!!
と言うものなのであります。
コメント
Sです。昨日ブログ更新されたのを知りメールしようと思ったのですが、通信サーバーエラーで配信不能でした。現在、遠征先の盛岡のホテルからコメントしております。昨日まで荒雄川にも行ってましたので、後日改めてメールさせていただきます。でも、あまり持ち上げてもらっても困りますが、ありがとうございます。では
SHIMA様、こんにちわ!
返す返す、楽しい釣行でした。群馬は素晴らしいフィールドが沢山ですね!
東北遠征、羨ましいです。
安全第一で存分に楽しんできてください!