灼熱の8月いっぱいを、どこへも行かず怠惰に過ごしておりました。
汗まみれのままフト我に返ると、渓流のシーズンはもう一か月を切っておるのでありますな。
ラスト・スパートをかけねばなりません。
数年ぶりに群馬県は上野村、本谷・毛ばり専用区へ行って、魚のサイズ、数共に慰めてもらう予定を立てておりましたな。
しかし前日になって漁協さんから
「上流のダムが放水するので、釣りにならないんスよね♡」
と悲しいお知らせを受けてしまったのであります。
断腸の思いで予約をキャンセルいたしましたな。
しかし釣行自体を諦める選択肢はありませんので(最近気が付きましたが)、上野村にもほど近いようらくさんへ、これまた久しぶりに行ってみることにしたのであります。
何年ぶりでしょうか。
思えばアレから今日まで、相当にフライフィッシングの経験を積みましたな。
今のOSSANの技術をもってすれば、如何にノット・イージーなネイティブ・マウンテンバレーにビジブルな大ヤマメが悠々とスイミングなようらくと言えど、それはもうボッコボコにポッシブルでしょう・・・!
全くダメだったんですがwww
いや、参りました。
14時頃まで右往左往しましたが、10~15センチくらいの山女魚、虹、ブラウンの三冠を達成してしまい完全に心折れましたw
オニーチャンが優しく、「この上流の溜まりに放流しときますからね~」と言ってくれましたが、放流されたばかりの魚たちがすぐにフライを口にしない事くらいは、この数年で学習しております。
それらは次に来るお客さんたちの魚でありますな。
キャンプ場の設備が少しだけ充実し、以前は踏み入ることが出来なかった藪も整理されておりましたな。
しかし更に記憶を辿ってみると、やはり台風の影響でありましょう。
以前あった堰堤上の大きなプールもなくなり、渓相全体もかなり異なってしまっておりました。
ちょっと寂しい気もしましたが、ここに限った話ではないのでありますな。
予想を超える厳しい日差しもあって、体調が悪くなる一歩手前まで追い込まれてしまいました。
そのままようらくでキャンプしても良かったのですが、本谷へ行くつもりで調べていたキャンプ場へ早々に移動することにしたのでありましたな。
上野村・野栗(竜神の滝)キャンプ場へは30分ほどしかかかりませんでした。
キャンプ場の入り口に位置する「野栗食品」さんで受付をしますが、昨今のキャンプ場では考えられないくらいの気安い料金で驚いてしまいました。
しかし川沿いに設えられたオートサイトは細長い造りで、大型のテントやタープを設置するのはほぼ無理でありますな。
広場的スペースもあるにはありますが、車から荷物を運ぶ必要があります。
トイレも簡易汲み取り式で、全く困りませんが久しぶりの低規格といえますな。
自分を含めて3組のキャンパーがおりましたが、ワタクシはサイトの最奥に車を停め、かなり悩みつつタープを広げました。
100円を払うと薪を無制限で使える・・・!
というシステムに期待しておりましたが、
これも少々好みとは異なっていたことと、体力の消耗&翌日の撤収のことを考えて焚火も行わないことにしたのであります。
今日は何やら、いろんなことがうまくいきません・・・
タープを張り終えるとあろうことか、雨まで降ってきましたな;;
しかし!!
ギンギンに冷えた氷温のビールさえあれば、計画通りに進まなかった一日の疲労感など、はるかプレアデス星雲の彼方までぶっ飛んでいくのでありますな!
その快感は、日中に汗をかけばかくほど大きく深くなり、形容し難く筆舌に尽くせぬものとなるのであります!!
身体の芯までカラッカラに乾いてしまっているので、最初の一本が空になる頃には全身に酔いがまわってしまう有様でありました。
こんなキャンプの、酔っぱらい連続ツイートにお付き合いいただいているフォロワーの皆さまには、あらためてお礼申し上げます^^;
今夜のメニューは
- 一番搾り
- 白ワイン
- 枝豆(茹で済)
- 熟成ゴーダチーズ
- 味付け豚肉
でありました。
何故か暖かい肉が食いたくなったので、珍しくフライパンを出して肉を焼きます。
味付けされたパックを炒めるだけですが、塩分がキツくてまいりましたな・・・(食ったけど)。
匂いにつられたのか、いきなり野良猫が脇をすり抜けていったのには肝を冷やしました。
こんなショッパイ肉はあげられませんな。
新たに手に入れたBTスピーカーが小さく鳴らす音楽と、遠く聞こえる滝の音に満足しつつ、夜が更けていきます。
軽い口当たりの白ワインはソロキャンプに合います。独りで、どんどん楽しくなっていってしまうのでありますな。
道中眺める神流川は濁りに濁り、とても釣りが出来そうな水色ではありませんでした。
上流に位置する本谷も、明日になっていきなり好転するとは思えませんでしたな。
ベロベロになって車へ這い入る頃には、翌日に釣りをする気は全くなくなっておりました。
翌朝。
意識を取り戻し、車の中で己の身体と対話します。
アルコールの分解度合いが理想的なのと、思いのほか体力が回復していることを発見して清々しい気分でありました。
そうとなれば、釣りはしなければなりませんなw
ゆっくりとコーヒーと朝食を済ませて道具をしまい、道の駅へ遊漁券を買いに行った後、目星をつけていたTF川へ移動しましたな。
集落を走る道から苦もなく入渓できるこのような川は、晩夏でもある今の時期、相当厳しいのでしょう。
しかしその厳しさをまだ知らないので、体験しておかなければなりません。
家々があるのみで、車の往来が全くないのも不思議な気分であります。
人も全く見かけません。廃屋となっている家屋も多いようでした。
セミは鳴かず、鳥も飛ばず、風も弱く蟲も這わず。夏の終わりの日差しの元で、奇妙に静かな風景が広がっています。
景色の中で動いているのはTF川の水と、釣果を焦ってオロオロしている滑稽なOSSANのみでありました。
昨日より気温が下がったことだけが救いでありましたな。
何の反応も得られないままにどんどん川を遡っていくと、これまで経験したことのない、不思議な感覚が湧いてきました。
妙に身体が軽いのです。
もう5月頃からロードワークもサボっており、不摂生を見直す気すらない私の体は、過去最高体重を更新し続けております。
普段できるだけ歩くようには心がけてはおりますが、アチコチの筋力は相当に衰えているはずなのでありますな。
それなのに岩を越える時も高巻きを強いられる時も、すでに舗装も家屋も途絶えた林道へ這い上がる際も、全く身体が重くないのです。
「なんだろコレ・・・」
ランナーズ・ハイという状態がありますな。正にあの精神状況とソックリでありました。
しかし今のワタクシは身体を鍛えることもなく、約一ヶ月の個人的禁漁期間を終え、ヨタヨタの身体を引きずって久しぶりにフィールドへやってきただけなのでありますな。
前夜にも全く我慢せず飲んだくれており、好調となる原因がありませんw
それなのに足はどんどん動き、大岩の落差を乗り越え、体が先へ先へと押し出されるようです。
身体中の筋肉と関節が正確に機能し、血液が身体中に巡るのを、ありありと感じているのであります。
いつもであれば踏ん張りの効かなくなりそうな急傾斜ですら、全く危なげなく乗り越えていけるのです。
数年分も肉体が若返ったようで、非常に喜ばしい状態には違いないですが、一体我が身体はどうなってしまったのか?
気分の良い川と森の中に身を置けば、脳がα波を増加させるのは何となく理解します。しかしこのβ-エンドルフィンはどこから、何を原因として発せられていると言うのでしょう?
自分の身体の軽さと、思いのままに伸びるフライライン、満足なフライのドリフト距離にも気分を良くしてどんどん釣り上がっていきます。
普段の釣り上がりと比べると、2倍ほどのペースだったはずであります。
まるで川の上流から、何者かに引っ張り上げてもらっている気分がするのでありました。
「こんなことなら、せっかくなので行けるところまで行ってみよう。」
「このまま釣れなくても、来シーズン以降のヒントにはなりますな。」
そんなことを考えながら歩いていると、予定していたよりもずっと上流まで遡ってきてしまったようでした。
谷を照らす日の光に柔らかな色が混じり始め、水面の白泡の立体感が異なって見えてきます。
険阻で薄暗い渓相へ変わったTF川の水は、清冽さを増しているようでありました。
美しい砂礫の洲がこぢんまりと広がっている、気分の良い場所へ降り立ちました。
帰路にかかる時間やツマラナイ翌日のことを思うと、あと十数分で引き返さなくてはなりません。
そんな気持ちが影響したのか、フト周囲の雰囲気が変わってしまいましたな。
これまでの、周囲の何者かに喝采を受けているような多幸感が、さっぱりと消えてしまったのであります。
それはまるで、だだっ広い空間にいきなり裸で放り出されたような、唐突と言って良い不安なものでありました。
「このトシになって、面白いこともあるもんだ。」
程よい岩に腰をかけ煙草に火を付けます。
何故かこれまで感じなかった、各部の疲労感が怒涛の勢いで全身を覆い始めます。
楽しかった今日1日の、潮時ということなのでしょう。ここを最後に引き返すことにいたしましたな。
眺めているうちにライズもありませんでしたが、根拠の無い確信がありました。
対岸のごく浅い岸際から順に、#16 EHカディスをトレースします。
エルクヘアをカチ上げ気味にし、丈夫に目立つように巻いた我が分身でありますな。
落ち込みが発するバブルレーンの切れる辺りの水中に、人の頭2つ分ほどの茶色い沈み石が見えます。
この小さなプールで、一番良い場所でしょう。
教科書通りのその場所で、正に電光石火と言いたいスピードでEHカディスを襲ったのは、
美しい山女魚なのでありました。
随分と奥地まで我慢させられ、この二日間の最期の最後で、ようやく胸の透くヒットなのでありました!
プール内を「これでもか!」と言わんばかりに縦横に走り回り、目を見張るような力強い疾走を魅せてくれたTF川の山女魚。
その美しさと愛おしさに、アラフィフのOSSANは思わず胸がつかえそうになってしまったのでありました。
絞り出されたような、ネットに収まるこの小さく儚い輝きは、きっと群馬の山々とTF川があまりに不憫に思って恵んでくれたのでしょうな。
ありがとう。
ちゃんと、そのままにお返しいたしますな。
更に奥へ進みたい気持ちもありましたが、今回はここまでにいたします。
息を切らせて這い上がった林道を引き返し始めると、大昔に家が立っていた痕跡の、石積みの土台やコンクリ製の水枡があちこちに苔むしておりましたな。
幼き頃に親父殿の田舎で見た覚えがあります。
小さな墓石も山肌に点在しておりました。以前はここにも人々が生活していたのでありますな。
ここへ彼らの子孫が戻ってくることは、恐らくもうないのでありましょう。
そのような遺物や道すらも、森に飲まれ消えかかっておりました。
ここへ用がある人間は、もう釣り人くらいしか居なくなっていくのかな?
またいつか訪れたいと思います。
その時には、もっとたくさんの魚に遊んでもらえることを、夢見るのでありますな。
コメント
こんばんは!
最後に山の神様が微笑んでくれましたね。
色白&ヒレピンの山女魚、羨ましいです^^
予定とは違った行程になったようですが、来季の開拓にもつながる釣行ですね♪
群馬県はもうそろそろ、他県も今月いっぱい、お互いに怪我なく楽しみましょう!
しげ様、こんばんわ。
予想はしていましたが、今回は暑さにやられ気味でした。
あまりのボロボロさに、本当に哀れみの一尾を恵まれたものだと思います^^;
何とか今月中にあと1箇所・・・良い魚に恵まれると良いのですが!