予想しなかった(なんでだ?)厳しい結果と山肌の昇降を強いられ、初日からヘトヘトになってしまいましたな。
しかし遠征釣行は始まったばかりであります。
明日赴く奥会津の渓が今回の本命なのである・・・と気持ちを切り替え、初日の釣りを切り上げることにいたしました。
車の窓を全開にして風の匂いや田畑の景色を楽しみながら、数十分をかけ今夜の野営地へ向かいましたな。
到着してわかりましたが、今回利用したキャンプ場は現地に目立つ看板も出しておらず、ホームページ等で予約もとっていないようでありました。
手入れの細やかなことを感じさせる各施設や、日照の方角にいたるまで、とても親切な説明をしてもらいましたな。
が、ヨタヨタブログで紹介することへの可否は確認することを忘れてしまいました。
あんまり多くのお客さんに来てもらっても・・・という営業スタンスである可能性もあるので今回は詳細しないことにいたします(そんな影響ないと思うけどw)。
今回はしっかり横になって休むため、一人用テントとタープを沢沿いのサイトを選んで設営します。
翌日は車を動かすのでタープを固定できないため、新たに用意した物と合わせ2本のポールで自立させることにしました。
複数人であればわけもない作業でしょうが、うまくバランスを取るのにコレが意外と手間取りましたな。
悪戦苦闘の末張り終えてみれば、「まぁそりゃそうだよなぁ」というところです。何しろ密林から届いた箱を、開封しないまま運び込んでいるくらい計画性がありませんw
製品に初期不良や不足等があると詰みますが、行き当たりバッタリを楽しんでいる部分もあったりするのでこれで良いのですな。
ようやく二泊を過ごすベースキャンプが完成した頃には、すっかり夕方の気配に包まれておりました。
ぅぐぅあはぁぁぁ~~♡!!
残照去りゆく山間のキャンプ場の片隅で、本日分の体力を振り絞ったアラフィフ男が独り。
喉から全身に駆け巡る肌の粟立つような快感と、僅かに吹いてくる夕風に全身を拭われて、あられもない歓喜の呻き声を発します。
水没(実はしてたw)によってビショ濡れだった服は、サイト設営でかいた汗によって乾く間もありませんでしたな。
ですが着替えをする余力は残っていないのであります。
椅子にへたり込み、ひたすらビールを呷りつつ「うう~」とか「ああ~」等と呻きながら回復を待つのみでありますな。
そうして徐々に人心地ついてくると、「いや~シアワセだなぁ。これは全く申し訳ないことだなぁw」等と独り言も多くなっていくのであります。
「どうも。落ち着きましたか?」
唐突に背後から声を掛けられ、一瞬ギョッとしてしまいました。人当たりの良いオーナーさんがいつの間にかやってきて、ニコニコしていましたな。
「あ、ハイ、なんとか・・」
「お客さんは釣りだったですね。今日はどうでした?」
「うっ!(ソレは聞かないで欲しかった)え~と天気が良すぎたんですよネ・・・」
「少し前に来た釣りの方たちもゴッソリ(!)釣れたって喜んでましたね。」
「・・・はは;;・・・僕は釣れても持って帰りませんので。ええ、フライなので・・・ゴニョゴニョ・・・」
「ああ、毛ばり釣りですね。ここいらは虫も沢山飛んでますからね」
「そうです。その虫に似せて作ったフライで釣るのです(もう少し説明の仕方は無いのかよ;;)」
「あれも色々用意するんでしょう? 一寸見せてもらえませんかね?」
「え・・ワタクシのフライを、見たいですって!?」
「あ~いえいえ、ご面倒でなければ・・・」
「・・・私のフライたちというのは半年程も日常の鬱屈を乗り越えて正に今のような季節をひたすら夢にみつつ未だ果たされぬ大物との邂逅を願い作成されるものなのであります。水生昆虫や溪魚の生態に関する専門的知識は脇に置きっぱなしになりつつも先人の知恵をパクろうとしたは良いがそのためにはアレが必要これも必要と増やした道具の累計投資額及び稼働率にある日愕然となり家族親兄弟親類縁者隣近所に懺悔するべき必要性へ直面し、そしてその一本を巻くのに10分もかかり(嘘)巻き上げたとしても使用に耐えるものはごくわずか(ヘタクソ)。そんな時に高価なマテリアルの端材が惜しくなってダストボックスから拾い上げ、思い付きで大した根拠もない摩訶不思議的かつ結局は投じられることの無さそうな駄作フライまで生み出すことなり、でもよく考えるとその事によって同様に高価なフックをも無駄にしてしまっているじゃないか仕方ないから入れておこう。そのようなあぁバカバカ理想と全然違うじゃん何やってんだオレ的反省及び自己嫌悪に塗れた悪戦苦闘の末数年を経て玉石混交なりにようやくメインボックスがスカスカじゃなくなってきたんですわたくし。これら止めどない情熱と衝動と妄想でもうナニが何だかわからなくなってしまったようなオソロシ面白悲しい世界を顕現する我が分身たちで満たされてしまっているフライボックスを見てしまいたいというのですか!?」
「見せたいんですね・・・」
「どうぞ」
そんなやり取りがあったか、なかったか。
約30年ぶりに読み進んだヘミングウェイの記憶とともに、怪しいものとなってしまいましたな。
やはり焚火を前にしてのソロキャンプ飲みとなれば、どこまでも楽しくなりすぎてしまうのであります。
いずれにしても、オーナーさんには近隣の釣れそうな河川のことまで教えて頂きました。せっかくなので最終日の半日はそこへ行ってみることにしましたな。
最後の一片まで残らず燃え尽きるよう、細やかに焚き火の世話を続けます。
ボトルワインも空になるのが早すぎないよう、遅すぎないよう気をつけながら飲むのも楽しいものでありますな。
そうしてふと見上げた新月の、足元が揺らいでくるかに感じる荘厳な星空に気が付いて。
今日という一日に満足したのでありました。
翌日。
早朝に良い思いをしたことのないワタクシは、完全に日が昇るまでゴロゴロした後、ゆっくりと山中の朝を楽しみました。
まだ丸一日と半分が残されておりますからね。余裕余裕。
とは言っても今回のメインに据えていた奥会津までは、ここから1時間ほどを見なければならない距離感であります。
「もう近場で済ませちゃおうかなぁ~」等とヘタレそうになる気持に喝をいれ、車に乗り込みました。
今日こそは昨年訪れたBV川本流で、大物を釣り上げる決意でありましたな。
この一貫性の欠片もないブログに於いて、現在・過去形の表現が入り乱れ収拾がついていない事は皆さま既にお気づきかと思います。
本人はあまり気にしていないのでソンナモンダとしておいて下さい。
ですがここで過去形の体を取っているのは、そうしたい事情に直面したからであることをお断りさせていただきたいのですな。
釣れませんでした
目指した川で
釣りが出来ませんでした;;
アプローチに相当厳しい崖を降りなければならず(同様登らなければなりませんでした)、昨日の反省を踏まえたつもりのフェルトソール・シューズで足を滑らせてしまいましたな。
幸いクライミング・スリングにフルパワーでしがみ付くことで滑落を免れましたが、右大腿部を岩肌に強打してしまいました。
普段は何のトレーニングもしていないのに瞬間的なクソ力の発揮を強いたせいで、上半身の筋肉群にも相当のダメージを受けてしまったのであります。
そして今思えば当然ですが、奥会津は季節の進みが一段遅いようで、雪解けのため水勢が非常に強く水量も多かったのでありますな。
更に決定的だったことは、目星を付けていた釣りのスタート地点の渓相が変わってしまっておりました。
身体のダメージがなければ背丈を超える巨岩もよじ登るところでしたが、そこからは遡ることも対岸へ渡ることも出来なくなってしまったのであります。
ウェーディング・スタッフを用意していなければ、其処までたどり着くことも出来なかったでしょう。
未練がましく大岩に腰を下ろし一服付けながら、何とかならないものかと周囲の様子を観察します。
昨日にまして天候も良く、辺りは陽光で溢れかえるようです。
そこはドウドウと恐ろし気に轟く川音しか聞こえないのに、張り詰めるような奇妙な静寂と緊張感に満たされた世界でありました。
「何か違うな。今のここはワシが知ってるあの日のような世界じゃないんだ。」
手の届く範囲に一番大きなサイズのカディスを数流しして後すぐ、ロッドをたたんで引き返すことにいたしました。
もう一つの選択肢として挙げていた、此処に程近い川への転戦も取りやめにしましたな。
気持ちが折れたのかもしれません。ヘタレたのかもしれませんな。
今釣行のメインに据えていたフィールドであるにも関わらずそこでの釣りを諦めたのは
無理スンナ 今のお前さんじゃ手に余る
と周囲の様々に諭されているように感じてしまったからなのでありました。
仕方ありません。
決定的な時間のロスとなってしまいましたが、今後の計画を立てるのに有用な経験値を得られたと思う事といたします。
この場所へはまた、優しい季節を待って参ることにいたしましょう。
再び南会津へ引き返し、何かあった時のためにピックアップしていたER川と支流のBS川へ入り直すことにしましたな。
この辺の情報量と即応対応力が、昨年のOSSANからは成長したトコロなのでありますw
到着するとすでに正午近く。所々に釣り人のものらしき車が停まっておりました。
気温は27℃ほどまで上がり、すっかり初夏の雰囲気でありますな。照りつける梅雨前の日射で止めどなく汗を絞られます。
蜉蝣も舞っていますが、テレストリアルを意識しても良いはずと考えましたな。
相変わらずの行き当たりばったりで入渓ポイントを探し、#16ピーコックプードルを結んで釣り上がることにしました。
それにしても、こちらでも入退渓には苦労しましたな。
やはり山肌の傾斜は何処もキツく、ウェットウェーディング用に用意した薄手ズボンが藪漕ぎで破れないようにと気を使わなければなりません。
精力満々の若人であればそれほどの苦もないのでしょうが、ヨタヨタに萎えた足腰を引きずってきたossanであります。
そしてあわや滑落・・・であったダメージを負ってしまっている身には辛いものでありました。
信じられない数値まで心拍を上げてくれる昇降の繰り返しも、釣果があれば耐えられると言うものですが
魚は釣れていない
のでありますよ;;
このような極限とも言える辛い修行中、単独行である事にはメリットもあるのだなぁ・・・と考えておりました。
「うあぁ〜こりゃもうダメだぁ〜!」「これは死ぬからもうオレ死ぬから!!」「ヤバいマジ無理マジ助けて!」「ありえないっしょ聞いてないっしょ!」「あうはぁぅ〜・・もうイヤダ〜!!」
・・・と、大凡アラフィフ男子が口にして良いとは思えない大音量かつ息も絶え絶えの慟哭的独白を聞かれずに済む事でありますな・・・
反応を得られないままにゴリゴリと体力を削られ続け、各筋肉も突っ張り始めました。時計は16時を回っております。
念を入れてヘッドライトも忍ばせておりますが、このようなフィールドでイブニングまでは粘らないことにしています。
釣果を見込めるからと言え、日が暮れてからのソロ行動はリスクが高すぎると考えているのでありますな。
何より、肉体的限界がすぐそこまで来ております。
現場で完全消耗するまでイッてしまうと、人里近い渓の中で遭難一歩手前・・と言うことになってしまいそうですな。
あとどのくらい持つものかと、自身の身体と対話をするように釣り上がり続けました。
厳しい昇降をこなす為の残エネルギーは脱渓のための一度きり。ポイントを大きく移動することは既に不可能・・・という辺りまで追い込まれてしまいましたな。
主要日における完全敗退を覚悟し始め、ブログでどのように言い訳を書こうかと考え始めた頃、やっとのことで可愛いイワナがプードルを咥えてくれました・・・!
いやはや・・これは厳しい。
キビシイなんてもんじゃありません。憐れみとしての一尾としか思えないのでありました。
我が人生に対し悪態をつくほどの力も残っていません。
南会津に釣りの有名河川は数あれど、そのどれもでこれほどの厳しい修行的釣りを強いられるものでありましょうか。
一体何が噛み合っていないのでありましょうか? 季節や天候等のタイミングがそうさせるのでありましょうか?
涙目になりながら精々ゆっくり別れを惜しもうとしたその一尾は、あっという間もなく流れへ駆け込んで行きましたな。
・・・素っ気ないのねぇ・・・;;
最後の力を振り絞って県道へ這い上がり、へたり込んで体力回復を待っている時に気付きましたな。
魚の匂いがしないのであります。
これまで釣り(フライに限らず)を続けてきて、フィールドに身を置いている時に魚の匂いを感じた時には、良い思いをしてきた記憶が刷り込まれておるのですな。
ワタクシは言うまでもなく「感覚重視人間」であります。
認識しているからこそ普段はできるだけエビデンス(使ってみたかっただけw)を重視するよう心がけてもおりますが、究極的な判断ではやはり経験則やカンに頼る傾向にあります。
何処を向いてみても釣れそうに思える美しい景色の中で、昨日も今日も魚の匂いがしないのでありました。
思い込みでしょうか。感じなかっただけでしょうか。そもそもが妄想なのでしょうか・・・
まぁしかし、いつまでも都合の良い由無し事を道端に座り込んで科学しているわけにもいかないのであります。
身体のあちこちへ走る痛みと、なんとも言えない気持ちを引きずったままキャンプ場へ引き返す羽目となってしまった二日目が終わりましたな。
コメント
仕事をかいくぐり、渓流にたつことが、かっこいいんですよ。価値ある一匹です。おつかれさまでした^^
toru 様、こんにちわ。
いま思い返してみても、本当にどうしようもなくダメな一日でした。
渓流FFは、こう言う時に人に行き会う可能性が低い事もメリットの一つですね。
釣れずにボロボロになっているところを他人様に晒さなくて済みます^^;
もしそうであったとしても、カッコよく見えるアングラーにいつかはなりたいものと願っております・・・
SHIMAです。こんばんわ。相変わらず精力的な執筆恐れ入ります。第2弾までは寂しく悔しい思いのようですが、最終日第3弾は、起死回生、9回ツーアウト逆転満塁ホームラン、スーパームーンと皆既月食の組み合わせのような落ちが待っていることを考えると、わくわくしつつ、楽しみでなりません。いや、きっとそうだ、そうに違いない。間違いない。期待してます。
SHIMA様こんにちわ。
未だかつて「釣れなかった事」をこれほど長々と書き散らしたことがあったでしょうか。
それほどに残念で、己の不甲斐なさが悔しく・・・精も根も尽き果てるような一日でありました。
果たしてご期待のようなエンディングを迎えたか否か。
ワタクシの実力はご存じなのに、とてつもない高さのハードルを置かないでくださいww
はじめまして。
FFの情報を探していると、時々このブログに辿り着く事が有ります。久しぶりにブログを拝見したのですが、相変わらずの文才ぶりに安心すると同時に自分のホームの一つである南会津が取り上げられているので、コメントさせて頂きました。
南会津といっても人によって範囲が異なりますが、抱えている渓流の密度は高いですし、放流も熱心に行われている方ですね。そして釣り人の数が多いのも事実で、土日に行っても釣果を上げるのが厳しいです。近年では体力の有り余った高齢者が平日熱心に渓に足を運ぶ事も多いようで、釣りを難しくしています。ブログに掲載された写真で、何処に入られたか判りますが、何もプレッシャーの高い場所です。同じ入られた川でも土日であっても釣果を上げられる場所は有ります。ただ、怪我や熊と遭遇するリスクがあるので、オススメしません。
私も写真の川に入る事も有りますが、入渓点が全く違います。上から目線で恐縮ですが、釣れるかどうかはYouTube で見られる様にサイトフィッシングが成立するかどうかが一つの判断基準と考えています。今回紹介されたポイントでは魚が浮いている様なケースは稀です。なので、人が暫く入っていないタイミングを狙うか、人が入れない場所に入るかの二択になります。因みに自分は今シーズン熊に3回遭遇しています。崖からも落ちます。でも毎回30尾程度は釣れています。決して腕ではなく、魚のプレッシャーが低いのが理由です。
OSSANさんの記事が強く惹きつけたので、いつもはただ通り過ぎるのですが、コメントさせて頂きました。これからも頑張ってください。
sasurai 様、初めまして!
やはりそうですか。一見にして詳しい情報もない中での釣行でしたので、、安全策をとったポイント選定でしたが、魚の気配が少なかったのは超人気河川故という事ですね。
ただ、私の場合は身体能力的にも不安を抱えていますので、原状は入渓自体がキビシイ場所は範囲外とすべきと心得ておるつもりです。
溪泊しなければ辿り着けない場所へも挑みたいと夢見ていますが、残された時間は目減りする一方です。
返す返す、「もっと若くしてこの釣りを始めたかった!」と思わずに居れません。
幸いにして平日釣行が多いので、魚たちの機嫌が良いタイミングに当たることを祈ろうと思います^^;
未だバス釣りでの、ブラインド>サイトフィッシングの感覚が残っていますが、これも経験を積むことで矯正されつつあるようです。
動画はほとんどチェックしてきませんでしたが、食わず嫌いはダメですねw
また思い出して頂いたときにお寄りいただき、アドバイスいただければ幸いです!