渓を覆う木々の葉は、日増しにその密度と色彩を増しつつありますな。
いよいよ我ら悦びの季節の到来であります。
GWの終了を見計らい、昨年の秋に良い思いをさせてもらった箒川へ行くことにいたしましたな。
このONシーズン中に、わざわざニジマスを釣りに行かないでも・・・とも思われるでしょうが、やっておきたい釣りがあったのであります。
でかいドライ・フライでデカイ魚を釣りたい
というモチベーションでありますな。
併せて、ゴツい高番手バンブーロッドの杮落としも目論んでの事であります。
昨秋は寒風に吹かれつつ、ウェットフライ一本勝負を挑んだのでした。それはそれで十分楽しめましたな。
その際、ヒゲナガ カワトビケラのアダルトを確認しておりました。
更に情報を調べていると、季節さえ合えば、モンカゲロウやオオマダラ等の大型メイフライのマッチゲームも楽しめるということであります。
ここのところ繊細な釣りが続いており、数日を要する釣行に出かけるチャンスも未だ巡ってきそうになく・・・
ココは一発、色々な部分をスッキリさせるべく「豪快なフライフィッシング」(当社比)を楽しんでおきたいと考えたのでありますな。
大型連休直後の東北道は快適な巡航速度であり、新緑で萌える山肌をバックに、滴るような藤の花の景色を存分に楽しませてくれました。
前日に降っていた雨の影響を心配しておりましたが、水位は(多分)平常。濁りも無いようでホッといたしました。
朝には虫たちが飛んでいる気配は希薄でしたな。ライズも無さそうで、ウェットフライを結び釣り下ることにしましたな。
さっそく本日のテーマからズレてしまっているように見えますが、そうでは無いのです。
想像していたシーズナル・パターンに間違いがなければ、この生命感の希薄な水面下で今まさに、大型のニンフやイマージャーが流下しているはずと考えてのことであります。
それらがハッチする午後に、勝負をかければ良いのですな。
オフシーズンに巻き貯めておいた渾身のマーチブラウンを、ダウン&アクロス〜スイング〜リトリーブ・・・
手応えはすぐに返ってきましたな!
昨年ファーストフィッシュを手にするまでの悶絶が、全くウソのようであります。
尺そこそこのレインボーたちは流れに乗って走り回り、豪快なジャンプを繰り返し、存分に楽しませてくれましたな。
しかしこれで予測が合っていたとするのなら、間違っているとする事も同時にやってみて結論を補完しなければなりません。
「ここは居るだろう?」と思える流れへ、信頼するいくつかのドライフライを投じてみましたが、反応はありませんでしたな。
そして「イヤイヤ、どう考えても居るだろw」という同じ流れへ、ウェットや大きめのニンフを流し込むと釣れます。
やはり「合っている」のです。
その理由の「ホントのところ」は怪しいものですが、少なくともライズを仕留めた時に似た充実感は得る事ができましたな。
川沿いに建つ旅館や架かる橋の風情、其処ここに咲き競う花々を眺めつつ、雑で独りよがりな科学を楽しむのに、長閑な箒川はうってつけでありました。
例えばこれが初めて行く山奥の渓であったなら、このような検証をすることは時間的、精神的、体力的にもできないと思うのです。
が、お昼を過ぎようという頃、早くもOSSANの前腕筋群は悲鳴を上げ始めましたな・・・
初めて使用するHardy Deluxe 8ft 6inは印象通りの重量級であり、もうキャスト動作をしたくないと思う程になっておりました。
箒川C&Rに放たれているようなサイズの魚を掛ければ、ウットリする程のしなやかなベンドカーブを描き、かつ主導権を失わないファイトを楽しめます。
しかし流れの早い川で、次々とキャスト&トレースを繰り返すようなフライフィッシングには向いていないロッドなのでしょう。
背中のパックには昼食を持ち歩いておりましたが、車へ戻って大休止を取ることにいたしましたな。
当日の駐車場は好天に恵まれた事もあり、ハイキング&スケッチ(写生)を楽しむ方々で賑わっておりました。
那須塩原温泉街に沿うフィールドですので、泊まりがけでゆったり楽しんでみても良いかもしれません。
しかし日々をうっちゃるだけでも齷齪するしかない身としては、中々にハードルの高いことでもありますな。
オニギリを平らげて、体力の回復と腕の痛みが引くのを呆然としつつ待っていると、大きなカゲロウたちが舞い始めました。
頃は良し。いよいよ本日のメイン・イベントの始まりでありますな。
持ち込んでいたもう一本のバンブー・ロッドへリールを付け替え、そのまま車道をたどり、一気に下流へ移動しました。
デカいドライフライを結んで、釣り上るのであります。
これまた冬の間に準備しておいた、「スティミュレーター」であります。どちらかと言えば、ヒゲナガ等のカディス系水生昆虫を模したパターンですな。
山岳渓流の激しい流れに飲まれない浮力を持ちつつ、デカい岩魚を狙い撃ちするため・・・と用意を決めたフライであります。
不沈艦フライになってもらうべく、ハックルを厚めに巻いて、予めディップタイプのフロータントも施してあります。
これを#5タックルでドーンとキャストし、ブリブリの魚にバコーンと食ってもらい、敢えて選んだクリックドラグ・リールをギャーギャー鳴らしてもらえたら、「本日の釣りは完成!」と相なる目論みなのでありました。
いや、まぁしかし。
それぞれのロッドについて、詳しいことは別立てページを作るつもりですが(何時になるかはわかりませんw)、午後のドライ勝負にと考えていたペゾン・エ・ミシェル、サン・ルイと言うバンブーロッド。
これまた噂に違わぬ剛竿でありました・・・
午前中に無理くり振り回していたHardyロッドのダメージ蓄積は、完全に想像を超えておりましたな。
多少短いとは言え、このペゾンの重量と剛性感も、魚とのファイト中に幾度もロッドの持ち手を交替せねばならない程に持て余すこととなりました。
まるで、実力に見合わぬ剛性ガチゴチのロードバイクでロングライドに出てしまった時のような辛さなのであります・・・
やっと釣りに来ていると言うのに、ネガティブな意味で初めて
「もう釣れなくてもイイかな・・・」
なんて思ってしまいましたからな;;
そのように様々なことを感じ、考えつつもヨタヨタと釣り上がり、デカいフライで多くの虹鱒たちに遊んでもらう事ができました。
ウェットフライを流しても反応の無かったランで起こった派手なライズを、いくつもモノにすることができましたな。
皆元気に流れへ帰っていきました。
これまで積み上げてきたFFに関することは無駄ではなかったのだ、という自己肯定感や安堵感と、抗いようのない身体能力の秋風落莫への怒りにも似た思いの交錯。
他の釣り人の姿もすっかり消えたフィールドで、側から見ればワタクシは純粋静謐の結晶であると同時に、メンドクサさ絶賛爆発中の人なのでありました。
大小の蜻蛉たちの群舞に引き上げられるように脱渓地点まで到着すると、大きな淵で激しいライズが連続しておりましたな。
「いゃ参ったなぁ・・」と思ってしまったのが正直なところでありました。
しかし、ほとんどの体力を使い果たしているとは言え、フライフィッシングをしにきてるんですよ?
全身が痛むヨタヨタ・ガタガタ状態とは言え、目の前でライズが起こってるんですよ・・・
据え膳食わぬは男の恥!!
勝負するしかないのであります。
飛び交う蜻蛉を狙って、全身を空中に翻して魚たちが襲い掛かっているのでありますな。
バブルレーンの一筋を狙い、クイル・ゴードン#14を投じました。
スティミュレーターが釣れる事はわかって満足したので、舞っている蜻蛉の雰囲気に合わせることにしたのですな。
数尾のレギュラーサイズを釣り上げると、いよいよ限界が近づいてきました。フトするとロッドを取り落としそうになります。
もう良いでしょう。何もかも忘れて今日の釣りに集中する事ができ、十分に楽しんだはずですな。
サテ帰ろうとしたその時、これまでとは明らかにレベルの違う魚が、ヌ〜っと深場から浮上しフライを吸い込んだのでありました!
反射的に合わせを入れると、ラインが水面を切り裂きましたな。
ぅんふっグフうぅ〜〜っ・・!
つい、おかしな呻き声が出てしまいました。
痛いです・・・;;
もう利き腕一本では、魚の突進を止める事ができませんでしたな。ロッドを伸されそうになり、慌てて左手をバットに添えました。
しかしこの体勢でヘタをすると、ロッドを折ってしまう事もある危険な状態であることもわかっていました。
ロッドパワーが最大限に発揮されるよう、ラインとの角度とテンションを保つだけで精一杯。
もと居た深みへ、翻って瀬尻へ、上流の落ち込みや水面に顔を出す岩裏へ。束縛から逃れようと魚が突進するたび、薄暮の景色にドラグの悲鳴が響きます。
呻きつつもラインを巻き返せるのは、激しい痛みで震え始めた片腕でロッドを保持できる、一時だけですな。
もう側道にギャラリーは居ません。雑巾を絞るようなOSSANと、全身で本能を滾らせるアイツだけの、純粋な勝負なのでありました。
そんなやり取りは5分ほども続いたでしょうか。
とうとう魚は岸際へ身を横たえ、その横でワタクシはガックリと膝をつきました。お互いがヘトヘトになり、荒い呼吸が3倍速シンクロするようでありました。
震える手で写真を撮り、水中で魚の身を立て、上流へ向けて支えます。
忙しく喘いだ鰓からいくつかの泡を吐き出したと思うと、ドンっと飛沫を上げて深みへ去って行きました。
「マジかよお前・・勝った気がしないんだけど・・・」
尚も水際でへたり込むOSSANの耳からは、橋上を渡る車の音が消え、ライズの音も消え、息つく音さえが消えます。
ほんの一瞬だけ、酸欠状態にも似た無音の世界に落ち込みます。
この墜落と揮発の感覚が、この充実と虚無こそが、なんとしてでも持って帰らねばならないものなのですな。
ワタクシはこの為に、この趣味に没頭していると言って過言ではないのです。
各部ボロボロではありますが「スッキリする豪快な釣り」も、「完成した釣り」も達成することができたようであります。
出来過ぎの一日を得られたと言えそうでありますな。
珍しく、遅くまで粘ることとなってしまいました。
翌早朝の出社時間を呪詛しつつ、再び東北道をぶっ飛ばすのでありました。
後日、使用したロッドの乾拭きをしましたな。グラファイト製ロッドでは年に一度くらいしか行わなかったことであります。
まさか自分が、漫画の中のオトーサンのような事をするとは思いませんでしたよw
また一つ、手のかかる道具に魅入られてしまったようでありますな。
とは言っても、徐々に慣れていくことも大事であります。 今後しばらくは、ヘビー級バンブーロッドを使うのは午前か午後のどちらかだけにしておこう・・・
そんなヘタレた決意を固めている、梅雨の走りの休日であります。
コメント
OSSAN様、こんばんは。
ウェットでの釣り、素晴らしいです!
憧れますね^^
話は変わりますが・・・竹竿増えていますね^^v
しげ様、こんばんわ。
ドライもウェットもニンフも、それぞれ異なった面白さがありますよね。
たまにはこのようなフィールドで、のんびりするのもオススメですよ^^
いやしかし竹竿の繁殖力には参りました。まさに雨後の筍の如くニョキニョキと生えてきます・・・;;
おはようございます!
面白いレポです。どう表現しましょ。
口元が歪みました。否ほころびました。
箒川なので読まなくてもいいかと思いきやさすがの描写力、自分んが釣ってるようだわ。
さて、自分は近所の川で4週連続の定点観測釣りでした。
タカダバンブーはいい仕事をしました。トップに癖がついてしまうほどで、裏返して魚を寄せては癖を直すようです。
特に先週は29匹の20~23センチまでの岩魚が釣れ続き、30匹目は釣らないことにして納竿です。種々のカゲロウのhatchがあり、アカマダラカゲロウパターンで25匹、エルクカディスで4匹です。生涯2番目の釣果でした。
夕方4時に極小落ち込みからエンドレスに出てくる感じは、断念する勇気との戦いです。熊は怖いしですね。
市内のお城本丸付近(入城封鎖後に射殺)や市街地内、去年は拙宅付近ー私が発見通報など頻繁にでるのです。
FFfreak 様、こんにちわ。
箒川は家からの距離が手頃な事もあり、なかなか気に入りました。またオフシーズンになったら行こうかなと思っています。
一日で二十九尾ですか!?それは大釣りですね。当方自然河川では、所謂ツヌケすらしたことがありません^^;
今年も各地で熊の情報が多くなってきたようです。
早朝や夕方などの、熊の活動的な時間帯は遭遇しないよう、気を引き締めて参りましょう!