フライ・フィッシングの輝く時は短いものだと、近頃はその想いばかりに囚われておりますな。
禁漁期があり四季があり、空のご機嫌や生業との兼ね合いもあり・・・時の過ぎ行くのに焦りが増すばかりであります。
方々へ足を伸ばし釣行を重ねてきたことで、片道2時間少々という道程も苦にならなくなってきましたな。
往復にかかる時間と、釣りに充てられる時間(と体力)のバランスが取れる、ギリギリのラインかな・・・?と考えるようになっております。
これ以上の距離感を日帰りで収めようとすれば、相当な気合いや何かしらの妥協も必要となってきますな。
前日までの荷造りや給油。スケジュール変更外圧からのブロッキング。細君へのご機嫌取り等も必要です。
さて・・・そんな中でも、年に一度は出かけたいフィールドがありますな。
奥日光の湯川であります。
昔日の姿を知るベテランアングラー諸兄には、現在の湯川の状況を嘆かれる向きもあろうかと拝察します。
しかし俄かアングラーであるOSSANにとって、このフィールドは現在進行形で素晴らしいフィールドなのですな。
難しいことは記せませんが、ここへ立つと心が解れる思いがするのであります。
そしてモチベーションはもう一つありました。
今年は湯川へブルックトラウトが導入されて、120周年となる記念すべき年なのでありますな。(厳密には118周年となるようですが、そこらへんご興味があれば調べて頂くのも一興かと)
いつものごとく赤沼茶屋さんで入漁証を購入し、湯滝駐車場へ向かいました。
9時前の到着となり、駐車場にも多くのアングラーの車がありましたが、すでに人の姿はありませんでしたな。
鳥たちの鳴きかわす声が賑やかな木道歩きを楽しみます。熊鈴の音がちょっとだけ邪魔に感じます。
2年前の狂騒とは雲泥の差でありますな。湯川はやっぱり平日に限ります。
「そう言えば、我が人生における小目標の一つ。尾瀬ヶ原内でのキャンプもそろそろ本気で計画を立てないと出来なくなってしまいそうだな・・・」
そんなことを考えつつ歩いていると数人のアングラーと行き合い、挨拶を交わしました。
皆さん早いのねぇ・・・
適当な踏み跡から入渓し、ゆっくりとタックルをセットします。
2年ぶりの流れで、久しぶりのシルクラインの水馴染みや浮きの感覚を楽しんでいると、水位が高いことに気が付きます。
そう言えば、湯滝の吐き出す水量も多かった気がしましたな。雨の合間で、湯の湖も満水なのでありましょうか?
どんよりとした釣り日和で、多少水の透明度も高かったようですな。
周囲では期待していたカディス類のハッチは少なく、代わりに沢山の中〜大型のメイフライが舞っておりました。
これから気温が上がれば、水面を流れていくダンが捕食される瞬間を目撃できるかも知れませんな。
不思議なのですが、それは何度見てもエキサイティングな瞬間なのであります。
それらメイフライたちの色味とサイズに合わせたパラシュートをトレースしていましたが、当たりは一向にありませんでしたな。
「まぁ、今日中に何尾か釣れれば良いですな・・・」
過去の湯川釣行では、ついぞなかった心境でありました。
それより周囲の木々の葉や苔・地衣類の、雨と朝露に濡れる瑞々しさ。あらゆる生き物たちが、今日の淡い日照を無駄にすまいと必死になっている気配。
そんな周囲の風景があまりに濃密で好ましいので、何となく気圧されていたところがありましたな。
とは言っても、魚の匂いのする場所でライズを見つけてしまっては、そうとばかりも言ってられません。
いくつもの流速の変化を跨いだ、反転流が小枝を巻き浮沈させているかなりややこしいポイントで、初釣果を得ることに成功いたしましたな。
やはりワタクシのFFは着実にレベルアップしているのだ・・・そう言って差し支えないでありましょう!!
って、お前かよwww
全く何も釣れないよりは良いのです。 魚臭がキツいのも言いませんな。 一尾は一尾なのであります。
でもな、湯川で最初に釣れてくるのだけはやめてくれないか・・・
すっかり毒気を抜かれてしまい、小滝の橋下流で昼食といたしましたな。
小学生たちがいくつものグループに分かれて、橋の上で記念撮影をしつつ通り過ぎていきます。
今ワタクシの感じている湯川と彼ら彼女らの感じる湯川は、全てが大きく決定的にかけ離れたものなのでありましょうな。
しかし、それは何かと鋭く深く考察するには、OSSANには学も時間も足りなさすぎますな。
「ここへ来たこと」がある事だけでも覚えておいて、再びいつか、自分の足で来てみてほしいと思いました。
そうしたら、今日とは全く違った風景が見えること請け合いであります。
あ、万が一釣りをするようならば、フライフィッシングがおすすめでありますよw
午後も13時を過ぎる頃になると、目立たないながらもライズが増えてきておりました。
いくつかのそれらを仕留めることで、今年も無事、彼らの魚体に広がる宇宙を鑑賞することができましたな。
流れの力も借りた豪放なファイトを魅せる美しい川鱒を、こうして人の居ない川畔にうずくまって眺めていると、本当に愛おしいものであります。
16時を過ぎて日が傾いたと思ったらすぐに、フライが見えづらくなり納竿としましたな。
いつもながら大物には縁がありませんでしたが、数尾に遊んでもらうことが出来て十分満足することができました。
やはり奥日光・湯川は美しいフィールドであります。
フライフィッシングを始めていなければ、こうして何度も足を運ぶこともなかったのでありましょうな。
出来れば年に数度も通いたいところですが、まだあっちもコッチも気になっておりますのでな・・・
改めて、120年前のグラバーさん、パーレットさんに感謝申し上げます。