世の活動が元に戻りつつある昨今、我が勤め先のブラック体質も復活しております。
有給を取らせない為のプレッシャーは、そのうち完膚なきまでにやっつけるか、無視してやろうと考えておりますな。
人生の佳い時間はそれ程長くはないのです。
それはそれとして。
勝手に組まれたスケジュールを勝手に組み直し、勝手に連休を確保いたしました。
短すぎるそれを最大限活用しようとすれば、多少の無理が生じるのは仕方ないところであります。
1日の仕事が終わった後、一路信州は木曽方面へ向かうことにいたしましたな。
「アマゴ」という渓魚を釣ってみたいと、数年前から考えておったのであります。
岩魚や山女魚などと同様に、各地でバリエーション豊かな呼び名を持つ鱒(サケ科サケ目)でありますな。
静岡以西の太平洋側渓流へ分布し、体側に朱や橙の斑点を持つ、華麗な渓魚であります。
4時間弱のドライブを要して到着したのは、開田高原の日の出旅館さんであります。
滞在時間の短いにも関わらず、少々贅沢な宿となってしまったのは計画外でありましたな。
実は数件のペンションへ予約連絡を試みるも、営業していなかったり電話自体が不通であったりと・・・
木曽には木曽の時間が流れておるのですな。
しかしまぁキッチリと温泉があり、食べきれないほどの旨い食事も上げ膳据え膳で出てくるのですから文句はないのであります。
予約時(前日夕刻)に電話の向こうで慌てていた気配がありましたが、当日の宿泊客はワタクシ一人でありましたな。
そのために大きな湯船を満たす温泉を加温するのでは、昨今高騰する燃料代もあってバカにならないでしょう。
そんなことを食事のために通された個室で考えていると、何やら贅沢なことだと思えたり、申し訳ないと感じたり。
それにしても、大きな旅館に一人だけの宿泊客であります。
おかみさんとイケメン男子(息子さんですかな?)が控えめに世話を焼いてくれる以外には、何の気配も感じません。
早くも短い夏を迎えつつある高原の夜は、未だ虫たちの鳴く声もなく、全くの無音の世界なのでありました。
日常では「静かだなぁ・・」と感じていても、よくよく耳を澄ませると電子機器の発する僅かなノイズであったり、何かしらの音は聞こえているものであります。
ですがこの日は、風の音や「しーん」と言う音すら無いのでありました。
網戸を抜けて、周囲の木々と土の好ましい香りが静かに流れ込んできます。
この辺りの名物という「すんき」入りの蕎麦や馬刺し、食べるより釣る方が嬉しい岩魚の塩焼き等を堪能しながら、幼い日の夏休みをまた思い出しておりましたな。
無音なことは別として、岩手の親父殿の実家で過ごした夏の夜がまさに、この気配や匂いを帯びていた気がします。
ほんの時たま、灯りに誘われた羽虫たちが網戸や障子に当たる微かな音が耳に楽しいです。
キリッと冷えた大瓶ビールを2本ほど。
あらかた食事を終えた頃、路線バスの走り去っていく音が遠くで聞こえましたな。
おそらく客は一人も乗っていないのではないかと思いました。
さて。
釣行初日である翌日も、朝からガンガン照りの天気となりましたな。
今年の記録的に短い梅雨とこの数日の猛暑は、木曽でも渇水をもたらしていたようでありました。
メジャーな場所を選んでおったこともあり、厳しい釣りを覚悟しなくてはなりません。
だからと言って、ここまで来てまさかの事態だけは避けなければならないのであります。
ライズの起こらない美しい流れに、自身の培ってきた手練手管(ドライ限定で)の限りを尽くし挑みましたな。
入渓点の上下で、約1キロずつ程を探りました。大岩や浮石も多いので、とても歩きにくい川でありましたな。
気温が上昇し切ってしまう前に数尾を手にしなければ・・・と早めにポイントを見切り、どんどん移動します。
心拍が上がるほどではありませんが、昨晩のビールは大量の汗へと変わり、全身から吹き出し続けましたな。
しかしオカシイとしか言いようの無い都内の熱湿と比べれば、時折吹いてくる爽快な風もあって良い運動の範疇と言えます。
その風をやり過ごすため水面を凝視していると、緩い深みの底で魚の横腹が光った気がしましたな。
水面の変化が単調に見える、ちょっと苦手なタイプの流れでありました。
それまでのテンポ重視の短めなティペットを一気に4フィート程伸ばし、更に0.5番手落としました。
この日初めて使うことにした不慣れなロッドのパワー感に苦労しつつ、スクールで教わったスラックの作り方を再現しようとしましたが、やはりうまく出来ないのでありました・・
そうこうして幾度かレーンを修正するうち、滅多に登用されないCDCアントが激しく水飛沫を上げましたな!
反射的にロッドを立てると「ピイィーン!」という手応えと、スピード感と重量感を併せ持った反発力が伝わってきます。
過去何度も書いたようですが、この手応えがあった時はバラさないのであります!
それでもファーストフィッシュだからと慎重なやりとりの末ネットへ収めたのは、体側の橙も鮮やかな、
見間違うことなき木曽アマゴ!!でありますな。
ヒレも美しく体高もあって、これが俗にいう「タナビラ」ということでよろしいでしょうかな?
良いと言ってください・・・
この後も大汗をかきつつ右往左往したこの川では、手のひらサイズのもう一尾を手にしたきりとなってしまいましたのでな;;
あまりの日射と発汗で飲み物の残量が心細くなり、バラシも連発していたことから、一度車へ引き返すことにしました。
ロッドの交換と飲み物の補充。せっかくなので、日射を避けられそうな渓へ移動することにしたのであります。
それにしても、ここも美しい土地でありますな。
青々とした田畑が広がり、山々の森は深く数多ある河川を流れる水は清く、いい気な旅行者の目には懐かしい日本の原風景の一つと映ります。
宿のおかみさんには「暑いでしょう?」と気を遣っていただきましたが、網戸を引いていれば快適に眠ることが出来ましたな。
高原にエアコンは無用のようであります。
無責任とは重々承知で、出来れば末長くこの景色が変わらずにいてくれたらと願うのですな。
移動先の渓はガラリと変わって、原流域の雰囲気でありましたな。
水色や水量も好みで、橋の上から覗き込むとアマゴが泳いでいるのが見えたんですがね〜・・・
残り時間も少なくなっておりましたので、ドライフライを浮かべたいと思えるポイントだけに絞ってガシガシと釣り上がりましたな。
ブラインドカーブの先や岩を乗り越えた先がどうなっているのかを、再び訪れる時のために記憶に焼き付けるのです。
残念ながらタイムアップまでに、OSSANのフライに反応してくれる心優しいアマゴはいないのでありましたが;;
まぁ仕方ありませんな。
初めて訪れたフィールドで、「アマゴを釣る」という目標は(一応)達成できたのであります。
足も上がり難くなって危なくなってきたのを合図として、引き返すことといたしましたな。
何より身体の奥底がカラカラになっており、一刻も早く冷たいビールを流し込まねば耐えられない気分でありました。
その前にはキャンプも整えねばなりません。イヤハヤ、忙しない釣りだなぁ・・
でもコレがまた、ムチャクチャに面白いんだなぁ!
(長いので後編に続いてしまいます)
コメント
初めてのアマゴは、やはり感動しますよね!
ヤマメも十分美しいのですが、朱点があるかどうかで随分違うものです。
お泊まりでの釣行というのも贅沢で羨ましいです。
当方は仕事で2週連続釣りはお預け。
次の土曜日は全開で楽しみます!
Sasuraiflyfisher 様こんにちわ。
ホントは二泊ともキャンプにしたかったのですが、まぁコレはこれで^^;
夏空の下で輝くタナビラの美しさは格別でした!
また一つ、幾度も訪れたいと思えるフィールドが出来て嬉しいやら悩ましいやらです。
お預けを喰った後の釣行は気合漲りますね。
無理せず、安全に楽しんで参りましょう!