(いつも通りの)寂しい釣果ではありますが、初フィールドで初のアマゴを手にすることが出来ました。
汗をかき続けたことで活動エネルギーも枯渇寸前となっており、この辺りで満足しておいた方が良さそうであります。
15時前には釣りを切り上げ、予約していたキャンプ場へ向かうことにしましたな。
到着してから判明しましたが、今回訪れた開田高原キャンプ場は完全予約制でありました。
見つかったコンタクト先は木曽の観光課でありましたので、もう一段歩を進める必要がありましたな。
「あのスイマセン・・突然で申し訳ないのですが、明後日一泊。最近ちょっと太めのイケオジ・フライフィッシャー1人お願いできますか?」
「え?あぁハイ・・・大丈夫ですが、雨が降っても来られますか? 酷い夕立があることがありますので・・・」
「それは平気です。キャンプでは大抵降られてますのでw」
「お一人ですか? 怖くないんですか?」
「え・・?」
予約の電話口で少々引っ掛かりましたな。
夕立は仕方ありません。標高の高い場所であれば尚更、想定しておかなければならないことであります。
翌日まで降るのでは釣りに困りますし、焚き火ができなくなる可能性もありますが、タープの下で呑みながら聴く雨音は良いものでありますな。
一泊なのでテントは張らず、車内で眠るつもりです。
しかしソロキャンプを申し出ているイケオジ(しつこい)に対して、わざわざ「怖くないですか?」ですと?
それはどう考えても、そのキャンプ場では「怖いことが起こる」と捉えられませんかな?
しかし会話の成り行きからして、
「えとえと、チョット待ってください。怖いとは具体的に何が起こってしまうのですか?まさか時を遡ること300余年前、家族同様と暮らした馬が売られていく朝に、密かに心を通わせていたその家の娘が連れて突如出奔。追われ追われた末にとうとうこの地へ追い詰められ、此れは最期と人馬ともに淵に身を投げてしまった。以降近隣住民は年に一度のその日だけ、日暮れを過ぎると外出しない慣わしとなった。馬に乗った娘が現れ、執拗にあの淵へと追いやられるからである・・・と言うような恐ろしくも哀しい伝説のその日が明後日だったりすると言うのですか?木曽だけに・・・」
と、何処かで聞いたような話でもあるのかとは聞けなかったのであります。
気に掛けるほどのものではなさそうな熊の出没情報を、それとなく聞き出すのみでありました。
「では明後日一泊ですね。どうぞお気をつけていらしてください・・・」
「・・・お願いします・・・」
不安になるじゃないですかw
到着してみると、明るい木立の中に小規模なフリーサイトが散在する、とても好みな雰囲気のキャンプ場だったのでホッといたしました。
車に積みっぱなしのキャンプ道具を広げる体力が整うまで、しばしボ〜ッと休憩しておりましたな。
見渡すところ、本日の利用者はOSSANとソロの若い男性オートキャンパーのみのようでした。
雑誌の表紙から抜け出して来たような、真新しい快適装備に囲まれた様子が少々気になりましたが、まぁ余計なお世話ですな。
今宵も静かな夜が約束されたようで安堵いたしました。
そんな事より今回、ワタクシは大きな過ちを犯しておりましたよ・・・
何かしら車に積んであるだろうと思っていた酒のツマミが、鯖の缶詰2つのみ!しかなかったのであります。
いや、鯖缶は好きですし、身体に良いとも言われてますけどネ・・・
他には遊漁証購入ついでにコンビニで買っておいたポテチと、トドメのつもりで前日に用意したレトルトのパスタ(カルボナーラ)だけであります。
せめて片方は何かしら別の缶詰であったなら、楽しみにしていた今宵の独宴はもう少し豊かなものとなったはずでありますな・・・
既にセッティングしてしまったタープ(車で固定してる)を再びバラし、道中見かけた商店まで往復するような根性はありません。
快適装備の若人のところへ行き「ヤイ、今夜のツマミを出せ!」と頬を札束で引っ叩いてみますか?
シャイなワタクシにそのような事ができるはずも無く、そもそも札束など持ち合わせておりません。
焚き火や思惟、音楽にも飽いて眠ってしまうまで、チビチビとこれらで食いつなぐしかなくなってしまいましたな。
今回の反省に基づき、メモを残しておきます。
- 買い置き品に頼るならチェックくらいしろ。
- できるだけ同食材の缶詰購入は避けるべし。
- 時間がなくとも食料計画をおざなりにしてはならない。
- キャンプ地からの買い出しは常に不可能と心得よ。
- ビールは2リッター/一泊が最低ラインである。
- 用意したワインが好みの味とは限らない。
- ウィスキー等強い酒は身体が欲しないこともある。
- 手持ちクーラーバッグで板氷が保つのは投入から20時間が目安。
- 麦茶などの大型ペットボトルも持ち込むべし。凍らせれば保冷剤ともなる。
- 出来ればサバ缶は温めてから食うべし。翌日に胸焼けする。
いやはや。
年に1〜2度のキャンプだからこうなってしまうのです。もっと頻繁に機会があれば、この様な失敗はしないはずですな・・・
暮れてゆく森の表情と焚き火、遠くで響く雷鳴を楽しみつつ冷たいビールに唸ります。
それにしても電話の多いキャンプでしたな。電波が繋がっているのも良し悪しであります。
滅多にかかってこない生保レディー(死語ですかな?)等からはまだしも、キャンプ場のオーナーさんからも着信がありました。
「そちらを出るときにトイレの電気をつけてくるのを忘れてしまいました。灯りは持っていますか?」
「ははは・・・通りいっぺんの道具はありますので、お気遣いなく。多分明日はお会いする前に出発することになると思います。」
「そうですか、ではゆっくりお過ごしくださいね。何かあったらすぐお知らせください。」
「ありがとうございます。(だから、ナニかって何ですか;;)また来た時はお願いします。」
墨絵のような梢を透かして見上げる星の瞬きは、明日の好天を告げておりました。
渇き切って疲れた身体と標高のおかげで、日頃よりも少ないアルコール量で満足することができましたな。
森の中でナニモノカに追いかけられてしまうような事もなく、昨晩にも増して優しい木々と土の香りに包まれて、平和で濃密な夜でありました。
木曽の森は伊達ではないようであります。
「心配性なんだろうなぁ・・」
グッスリと眠ることができましたな。
翌朝です。
撤収にかかる時間はセッティングの半分以下でありますな。
釣旅行はキャンプとセットが好きですが、時間も体力も温存しなければなりません。出来るだけシンプルがジャスティスであります。
昨日短い挨拶を交わしたきりの若人サイトを横目に、早朝のキャンプ場を出発します。
ここから小一時間かかる道の駅で、待ち合わせの約束をしておりましたな。
近頃足繁く木曽へ通っているという、信州のFFフリーク隊長さん、凄腕師範の神さんと合流であります。
二日目はどこへ向かうか、ノープランにしておりました。お二人の釣りに便乗させて頂くだけのつもりでありましたな。
昨日よりグッと標高を落としたこの日の支流は、ノビノビとラインを操ることのできる素晴らしいフィールドでありました。
川床は明るく、そこ此処で反応があり(釣れるとは言っていないw)、どこまでも遡って行きたくなる衝動を覚えるのでありました。
晴れ渡る夏空のもと、川筋を吹き抜けてゆく風も爽快な事この上なしであります!!
「あぁ、フライフィッシングと言う、このとんでもなくオモシロイ釣りを始めなければ、こうしてこのような景色に身を置くこともなかったのだろうなぁ・・・」
シーズン・オフ中、まさにこんなフィールドを夢見つつ巻いたフライを流します。
下手っぴなフライが釣れないことはない事も、上手く巻けたフライだから爆釣出来るわけでもない事も学んできました。
あのフライは今日この瞬間までの、我が日常の希望や絶望、楽観や懊悩、昇華や墜落そのものであります。
様々の清濁を織り込んで巻かれた#12のフライも、流れの中ではとても小さく見えます。
無数の岩と清透な流れが響き合い、時折聞こえる野鳥の囀りと頭上を渡る風の音で包まれています。
輝くような非日常であります。
そこへ没入しようとするほど、水面と意識の狭間に、様々な感情や記憶が滑り込んでくることがあります。
それらは往々にして不愉快なものであったり、重くて邪魔なモノなので、努めて無視するようにしています。
しかしそのようなモノたちは身体に絡みついている度合いが強いので、抗いようのない事が多いのも正直なところであります。
そして
たった一尾の手のひら大の渓魚が、それらを暴力的に身体から引き剥がし、吹き飛ばしてくれる力を持っているのですな。
これは驚くべき事実なのであります。
だからOSSANはフライフィッシングでないと、自分で巻いたフライでないとダメなのでありますな。
こうなればしめたモノです。
もう何もかも忘れて、残り時間をひたすらこの遊びに向かい合うだけでありますな。
未来の自分に、改めて言っておきたいと思います。
「焦るな、耐えろ。最初の一尾に全てがある!」
サイズも数も程々でありましたが、夏を迎えつつある木曽の釣りを、足腰がフラフラになるまで楽しむことができました。
お二人には今回、タイプの違う川を2本案内していただきましたな。
川を変えたのち雷雨に見舞われたりもしましたが、汗みどろの身体に返って気持ち良い位でありました。(良い子は真似しないように)
そしてこの木曽エリアには、他にも面白そうな筋が無数に走っておることも、もう地図上で調査済みなのでありますw
既に、次回はまた違う渓へ浸透してみる作戦を立てつつあるところでありますな。また季節を変えて訪れたいものと考えております。
折々に通ってみたいところではありますが、いかんせん片道約4時間・・・やはり遠いのですな;;
たまには木曽さんの方から近づいて来てくれても・・良いのよ?
さて。
そろそろ本格的な暑さがやって来ますな。次はどこへ参りましょう?
相変わらず人をヒトとも思っていないスケジュール表と、遠く流れてゆく夏雲を交互に眺めつつ。
小暑も過ぎた夕刻に、フライ補充も余念のないワタクシであります。
コメント
読み応えのある釣行記でした!
ストーリーがあって表現力豊かで!
いや〜、作家さんでなければ、ですが作家になるべきです!
出版されたら買いますよ!
sasuraiflyfisher様、こんにちわ。
ありがとうございます。
こんな体裁のブログを続けているのは、お読みいただいた方々が日々をうっちゃる為の小さなエネルギーとなれれば・・もしくはフィールドへ向かうための「もう一押し」をお手伝い出来れば等の思いもあります。
それは取りも直さず、自身のためでもあるのですね。
フライフィッシングに出会ったことで、どれ程の救いを得られているか知れません。
得てして文中では大仰な言い回しになってしまいますが、毎度ヨタヨタになりつつも、どストレートに感動してしまっている故なのです。
しかしそれ以上に大逸れた考えもありませんので、今後とも「ウハハ、あいかわらずバカだなぁw」と楽しんでいただければ幸いです^^;