父親的 フィッシング・エゴイズム

今年は娘に「一緒にフライフィッシングに行こう!」と、お願いをしておりましたな。

近頃はメディアやSNS等でも、「釣りガール」という存在がもてはやされておるようです。

なんでもかんでも~ガールや~女子等と持ち上げればいいと言うモンでもあるまいに・・・と思っておりますし、我が娘にそうなって欲しいと思ったこともありません。

「父が夢中になっているものを知っておいてほしい」というだけの事であります。

前もって一度だけ、近所の公園でキャスティング練習をしておきましたな。

「とりあえずタイミングよくロッドを前後に振って、ラインを伸ばして狙ったところへフライを落とせば魚は釣れるからダイジョーブw」

ものすごく雑なレクチャーの割には、OSSANが初めて練習した時よりも上手くこなすのに驚きましたな。若いっていいねぇ・・・

5月を待って。

天候が良ければ寒くもなく暑くもなく、気持ちの良い釣りができる季節でありますな。

運よく学校行事の振り替え休日とOSSANの休日が重なる平日がありましたので、うらたんざわ渓流釣り場へ出かけることにしました。

簡単に釣れると思っていたのでしょう。スタート時はノリノリでしたが・・・

この日の為だけに用意しておいたヒップウェーダーを履かせ、二人でヤマメクラシックを遡りました。

広々とした場所では練習通りにキャスティングをこなせましたが、流れのある場所でのラインさばきは難しいようであります。

折角ドライフライに魚が出ても、ラインが弛んでいるのでアワセられないようですな。

そうは問屋が卸しませんw

距離や流速などに応じたライン捌きを教えますが、そんなものが一朝一夕に出来ない事は承知の上であります。

このあたりは慣れやセンス、反射神経などの問題でしょうな。

混乱しないよう、必要最低限の事だけに絞って教えておりましたが、結局クラシックで魚を手にすることは出来ませんでした。

早朝からほぼ休憩もなしでレクチャーを続け、「疲れた〜」「ハラ減った〜」と文句が多くなって参りましたな。

(父親の釣った)初めて見る生きたニジマスに、おっかなびっくりであります。

長時間(まだ半日も経っていませんが・・)の屋外活動に対し、箱入り娘の体力は絶望的に足りないようであります。

高校生のムスメっ子とはいえ、このような事では将来が心配になってしまいますな・・・

マァマァとなだめつつ受付まで戻り、長〜い昼食休憩といたしました。

普段は滅多に食べさせてもらえないカップ麺。今日はひと味違ったでしょう。

春の心地よい日差しと風の中で、父が泊まりがけで赴くフィールドのこと、学校行事や勉強、友達のこと・・・

時折辺りの景色へ目を遣りながら、そうして2時間ほども話し込んでいると体力も回復したようです。ようやっとの釣り再開でありましたな。

当日、目の前の区画エリアはルアーマン達で賑わっておりました。中には我ら同様、フライ・フィッシングのレクチャーを受けている女性の姿もありましたな。

「見てみなさい。きっとあの人も今日初めてフライフィッシングをするんだね。

今君がやっている釣りはブレイク寸前の最先端の釣りなんだゾ・・!」

そんなホラを吹きつつ、人を釣ってしまう可能性のないブロックへ移動します。

とにかく一尾の魚を釣ってもらうべくマラブーリーチのルースニングに切り替えると、すぐに虹鱒がヒットしましたな。

大騒ぎですが手は貸しませんw   最後まで自分でやりなさい。

「ぉお〜っきた!パパ、きた!どーすんのこれ!?早く来て!!」

「竿を立ててラインを引いて。強く引っ張られたらテキトーに糸を送りなさい。パパは手伝わんww」

「ええぇ〜なにそれ!?ヒャぁ〜〜〜・・!」

見事なヘッピリ腰となりつつも、なんとかファイト&キャッチできましたな。あらかじめティペットは太くしておいたのであります。

黙って川縁にしゃがみ込み、ネットに収まる魚を見つめている娘へ声をかけました。

「やったね、初めての獲物だよ。持って帰って食べようか?」

この日は珍しく、魚を持ち帰るための準備もしておったのでありますな。

「う〜ん食べない・・かな・・」娘は一瞬、迷ったように答えました。

きっとここで「持ち帰る」と答えてしまうと、生きている魚を〆ることも捌くことも、自分でやらされることを察していたのでありましょうw

フックを外された魚が泳ぎ去るのを見送る娘の表情は、父も初めて見るような複雑なものでありましたな。

さらに数尾の虹鱒と遊んでもらったのち、暗くならないうちに帰路へつきました。

ヘトヘトになったであろう娘は、車内で眠り続けておりましたな。

自身と繋がる命の躍動を、どう感じたのでしょう。初めて自分で釣った魚の印象は、君の心へどのように残るでしょう。

川底まで見える冷たい水、薫りの良い春風に揺れる木々の葉の喝采、キラキラと光りながら舞う蜻蛉、超腹ペコで食べるカップ麺の美味さ、一日中ロッドを振り続けた腕の痛み・・・

遥か未来に、今日のことを思い出してくれると嬉しいですな。

父はそれだけで、いいのですな。

コメント

  1. しげ より:

    おはようございます。
    一緒に釣りに行ってくれるなんて、素晴らしい親子関係じゃないですか^^
    やりたいことがあったり、友人との付き合いもあったりして、親と一緒の時間は少なくなってしまいますよね。
    この日の思い出は、きっと心に残ると思います♪

    うちの息子たちも、かつては渓流、管理釣場へ行ってくれました。
    先日、20歳になった長男の「お父さんと行ったよね!」という言葉を聞いて、感慨深いものがありました。

    今年もありがとうございました。
    よいお年をお迎えください。

  2. OSSAN より:

    しげ様、おはようございます。
    恐らく今年が最初で最後の機会であったと思います。
    小さ過ぎれば記憶に残らないかも知れませんし、来年以降は娘の忙しさも加速していくはずです。
    文句を言いながらたった1日でも、興味を持って付き合ってくれた娘に感謝です。
    一つ一つの事にキリをつけ、忙しない日々にも来年のチャレンジ計画を練っております。
    良き年の瀬をお過ごしください。

  3. TroutWater より:

    くしくも僕も27日にリバースポット早戸にシーズンオフの肩慣らし兼新作フライのテストを兼ねて出かけておりました。釣った後、ランディングするまでが「釣り」なので酷かもしれませんが手を出さないのは正解ですよね。自分と同じ一つの命と対峙している事を感じて欲しいものです。

  4. OSSAN より:

    TroutWater様こんにちわ。
    娘が自分の意志で釣りに行くことは、今後もうないかもしれません。
    だからこそ経験をしてほしかったのですが、記憶にはしっかり焼き付いたようです。
    私が源流系の釣り動画を見ていると、「こういう場所じゃなかったね~」等と話していますから。
    遠い未来に、ふと思い出してくれるだけで良いと思っております。