イーハトーブ釣行記・出発〜初日編

Ossanにとって、岩手県は特別な場所であります。

だいぶ前にチラと(でもないかw)触れたことがありますが、親父殿の出身県なのでありますな。

そんな自身のルーツとも言える土地で、いつかはフライフィッシングを通し山女魚や岩魚たちと遊んでみたいものと考えていたのであります。

それが今年、叶う運びとなりました。

関東では数日前に梅雨入りが発表されたばかりでありましたな。

連休確保のためスケジュールを調整し、ひどい湿気に包まれる東京を抜け出したのは、よく晴れた夜勤明けでありました。

近頃衰えてきたかと思っていた晴れ男パワーは、今遠征でその力を盛り返したようであります。

ココでいきなりの余談ですが。

出発の二週間ほど前に、初めて新幹線の切符をオンライン手配してみましたな。往復分の席を前もって購入することによる割引を受ける&駅へチケットを受け取りに行く手間を省く・・等が目的でありました。

しかしその手順の複雑さたるや!(オマエが言うなと言うところですが、WEBデザインも非常にわかり難いと思います;;)

スマートフォンへ登録してあるモバイルSUICAへ様々な情報を紐づけしていかなければならなかったり、会員登録をしなければならなかったりと、非常にわかり難くメンドクサイのであります。

そのサイト経由でホテルも割安手配出来ると言うエサがなかったら、途中で挫折していたかもしれない位には煩雑でありましたな。

「こんなん、ワシより年配の方々にはムリじゃね?」

せっかくの利便性も入口で躓いてしまっては勿体ないのであります。

JRさんには是非、私のようなIT弱者にも優しいサービスの在り方を再考頂きたいものでありますな・・・

ワタクシの知ってる新幹線(0系w)じゃない・・・流石にウェーディングベルトは収まりが悪かったですな。

そんなこんなで、大宮駅にて北行きの弾丸列車へ乗り換えます。

何年振りでありましょうか。この東北新幹線が開通する以前はL特急(ご存じ?)で6時間ほども要していた距離を、現代では2時間強で到着してしまうのでありますな。

ガラガラであろうと勝手に思い込んでいた車内は、ほぼ満席でありました。かさばる2ピースのロッドを持って来たことを一瞬だけ後悔しましたな。

運よく荷物置き場には空きがあり、何とかトランクケースとロッドチューブを収めることができました。

ヨタヨタしながら自分の席を探し当てると、3人掛けシートの通路側には「アタシはアンタのこと全く信用してないかんね!」とでも言いたげな、なぜかワタクシを睨みつけてくる怖そうなオバハンがおりました。

そして真ん中の席には「あ〜めんどくさいなぁ・・」と物憂い仕草でスマホから顔を上げる、デニム・ショートパンツの女子高生(?)が座っておりましたな。

二人の前を「すんませんすんません」と謝りつつ窓際の席へ滑り込むと、列車はいよいよ本格的にスピードを上げ始めたのでありました。

なんだこの緊張感は;;

「うーむ・・・」

楽しみであったビールと駅弁を目の前に展開しましたが、この後の煩わしさも予想しなくてはならなくなってしまいましたゾ。

ビールを飲めば当然トイレに行きたくなるのでありますし、それは当然にオバハン及びショートパンツに声をかけ、「すんませんすんません」と通路に出してもらわなければならないということであります。

そして戻ってきたら再び怖くてめんどくさそうな二人へ「すんませんすんません・・」と謝りつつ「自分の座席」へ入れてもらわなければならないのでありますな。

ビールが足りなければ車内販売で買い足す気でおりましたが、幾度もトイレへの往復を繰り返すと「いい加減にしてよ!!」とブチ切れられてしまうかも知れない可能性が濃厚なのであります。

「うーむ;;;」

だからどうなると言うことでもないでしょうが、なるべく音を立てないよう気をつけながら缶ビールのプルタブを開けました。

息を殺すようにしてそれを啜り、味わうどころではなくなってしまった地鶏の照り焼き丼弁当を飲み下していると、少々残念な気分となってきてしまいましたな・・・

恐ろしいスピードで後方へ飛び去って行く景色が、とっ散らかった看板だらけのビル群から田圃の緑の広がりへと変わっていきます。

「果たしてヒトというものは、本当にこのような速度で移動して良いものなのであろうか。もしかするとこの利益を享受することによって、時間軸として元々決定されている人間の寿命というものが縮まってしまう・・などということはないのであろうか?」

そのような自分でも全く信用できないオカルト事が少しだけ気にかかりつつ、できるだけ良き休日への期待感に集中しようとしていると、何列か後ろの席で交わされる罪のなさそうな噂話に興じる声が耳に入ってきましたな。

聞くともなしに聞いていると、そのイントネーションはまさに、幼少時に必死に聞き取ろうとしていた親族たちのものとそっくりなのでありました。

懐かしい記憶が、堰を切るように溢れ出てきましたな。

真夏の草いきれや夕立の濃厚な匂い、アオダイショウの黒々とした瞳と緑褐色の精密な鱗、道教えの豪奢な色彩と凶暴な大顎、立ち込んだ流れを降ってゆく黄金色の雲母の光、夏の大三角と赤いアンタレス、黒々とした山のシルエットから立ち昇る天の川、線香花火の煙の匂いと、その灯の向こうで明滅する声と笑顔、祖母が大事に育てていた薄いピンクの芙蓉の花・・・

疲労でブーストされた酔いの中で、大切に仕舞い込んでいた割にはこの数年も浮上してこなかった記憶を懐かしみ弄んでいると、居心地の悪いシートの中でいつの間にか熟睡してしまっておりましたな。

ザワつく乗客の気配と、駅への到着を告げる車内放送、列車の減速していく感覚の中で目を覚ましました。

すでにエントランス・デッキ前の通路には降車のための列ができており、その人々が捌けないと自分の荷物へたどり着けそうにありません。

やばい!

広げていた身の回り品をバタバタと回収し、リュックを引っ掴みます。

睨みのオババは途中駅で降りたのでありましょう、いつのに間にか居なくなっていたのが幸いでしたな。

あれからずっとスマホを弄っていた様子のショートパンツは、Ossanの慌てた様子に気圧されたのか、素早く前を通してくれました。

娘に借りてきたキャリーケースの重量とロッドチューブに振り回されながら、転げ落ちるように盛岡駅のホームへ降り立ったのでしたな。

すでに感無量でありますな。

いやはや・・危なく新幹線を乗り過ごすところでありました。荒い息をつきながらベンチへヘタリ込みましたな。

空気の匂いが新鮮なことに気付きますが、これはすぐに感じられなくなってしまうものであります。大事にしたい旅の楽しみの一つでありますな。

しかしどうにもフワフワとしたおかしな心持ちであります。こういうとき無理に体を動かすとロクな事はありません。

どうやら身体は目的地へ着いたようですが、気持ちはまだ宇都宮あたりにいるようです。精神と肉体の一致を見るまで、2分と17秒ほどを要しましたな。

山並みの見える街に暮らしたいと、常々思っております。

様々なご意見があろうかと思いますが、Ossanにとって盛岡と言えば石川啄木と盛岡冷麺でありますw

しかし岩手県全体で考えた時、個人的に馴染み深いのは花巻出身の宮沢賢治の方でありますな。

これも諸説あることですが、賢治は岩手県の名をモチーフとしてイーハトーブ、同様に盛岡をモリーオと造語して作中に登場させたりしております。

当時としては比較的恵まれた境遇であるのに、意固地なまでの理想主義者。そのせいか家族関係含め時々の処世もわりとハードモード。

作中で選ばれる言葉の一つ一つや、エピソード等を踏まえて当時の実生活を想像する時、どうしようもなく傷付き続ける他なかったのではないかと思えてしまいますな。

運に恵まれず、時に飲み込まれてしまった岩手の早すぎた逸材。作品や様々な後年の考証等に触れ、そのようなイメージを勝手に持っておりますな。

そんな賢治とワタクシに似通うところを探してみようとすれば、岩手という地への愛情と思慕の類似性あたりではないかなぁ・・等とも考えておるところであります。

そんな岩手県は盛岡という地に、リタイアを機に移住したSさんがおりますな。

氏にはこのブログ経由でお知り合いとなり、幾度か釣りにもご一緒させてもらっておりました。

日々の激務の間隙を縫うようにして時間やコスト、想像を絶するエネルギーをフライフィッシングへと傾注してきた「鬼」の一人であります。

現役中にも年に一度は岩手県への遠征を行なっていたと言いますから驚くやら羨ましいやらですが、とうとう移住までしてしまうのですから、FFに対するその覚悟たるや文字通り鬼気迫るものがあります。

そこで各々この地に対して特別な思いを持つ者同士、来たる盛期には共々存分に岩手の溪を巡ろうではないか・・!

昨年、飯田橋の寿司屋で送別の酒を傾けつつ、固い約束を交わしておったのでありましたな。

何やってんだオレw

約束の時間までは少し間があったので、すぐそばを流れる北上川の水を触りに行くことにしました。

全国でも4番目の大河である北上川は、前日までの雨を集めて少々濁りながら流れておりましたな。

橋桁の元で掬ってみる6月も終わりの川水は、別名で山々を縫っていた時分の清冽さを沈潜させつつも、とろりとした柔和も獲得しつつあるように感じられるのでありました。

ヒリヒリと何事にも感じやすく敏感である時代に得たものも沢山ありましょうが、当時なりにとことん戦った末の挫折であったり、コウと思っても心の奥底へしまい込んだり諦めたり・・・

そうしたことで感じられるようになってきた事もまた、沢山あるのだろうなぁと思うようになりましたな。「思えば遠くへ来たもんだ・・・」であります。

橋の上を行き交う人々の目を避けるようにジャバジャバ遊んでいると、待ち合わせている店の席が早めに空いた旨、Sさんから電話がかかって来ましたな。

立派な店構えでしたが、我が近所の焼肉店よりボリュームがあり、リーズナブルでありましたな。

歳なので冷麺まで辿り着けなかったのは心残りでありますが・・;

盛岡での初夜は、約束された明日よりの好釣と再会を祝いつつ、ガッツリ焼肉で精をつけたのでありました。

仕事がら睡眠時間のメチャクチャなOssanは、まだ夜も明けきらない4時前には起きてしまいました。

酔った勢いで夜の街を長いこと歩き回ったため足首あたりには疲労感が残っており、熱いシャワーでコンディション・リセットしましたな。

いよいよ初日であります。

朝の通学時間帯に街を抜け出しましたが、思いの外小学生らしき子供たちの姿を見かけるのに気持ちがほぐれましたな。

眺める景色はやはりどこか懐かしいように感じ、あの熟れたような真夏のそれには未だ早いようでしたが、微かに覚えのある匂いが吸い込む空気に混じっています。

様々なレクチャーを受けながら車は一路遠野方面へ。特に親戚はいないはずですが、ここもワタクシの大好きな地域なのでありますな。

手近にあるのはこれだけか・・実家に置きっぱなしになってるなw

幾冊もの『遠野物語』を収集していたり、トイレの脱臭剤代わりには遠野産の化粧炭を設置。

遠野ふるさと村へ以前訪れた際に体験工房で作った夫婦茶碗は、もう10年程もヘビーユースしております。

限りなくゼロに近い移住の可能性を模索してみたり、毎年秋口に販売される「遠野産ホップ使用一番搾り」が店頭から姿を消すと、喪失感に涙するくらいには気に入っておりますな。

鱒沢、青笹、早池峰、土淵、六角牛・・・二時間弱をかけ向かう途中、物語を読む中で想像を働かせた土地の標識が次々現れます。

その都度どんな話であったかと自身の記憶領域を弄ってみるのですが、すっかり思い出せなくなっていることに愕然としましたな;;

運転も任せきりなので何処をどう走ってたどり着いたものやら・・・ですが、遠野と言えばの猿ヶ石川水系支流へ入る事となりました。

気を揉んでいた天候はこれ以上ない程の好天となり、そのせいで魚たちが隠れてしまうことの方を心配しなければならないほどでありましたな。

周囲の全てが美しい初夏の輝きに満たされるようで、どう斜に構えてみても本日の釣りにネガティブな考えが浮かんできません。

車のエンジン音が止まると、その予感はいよいよ確信へと変わるようでありましたな。いいオッサンが二人して身支度を整えている最中、ワクワク感を抑えられないのであります。

「いや〜今日は尺イワナ間違いないですね。おめでとうございます!」

なかなか強烈なプレッシャーも掛けられてしまいましたなw

素晴らしい渓相であります。

いざ渓へ降り立ってみると、流れの両脇はブナをはじめとする落葉広葉樹で覆われておりました。

ロッドを振るのに都合が悪いほどの繁茂でもありません。まさに緑のトンネルといった趣の渓相でありますな。

流れには梢を透かした日光が注ぎ、清透でありながらも何処かしら優しさを感じるのでありました。

巨岩を縫って迸る山岳渓流での釣りもダイナミックで良いものですが、近頃は身体能力に不安を覚えることが増えました。

こうした森の中を流れる渓流が心安らぎ癒されるようで、一番の好みとなってまいりましたな。

陽の差し込む箇所の川砂を手で掬い、心細くなる一方である老眼を凝らしてみると、金色に光る白雲母がキラキラと指の間から溢れ落ちていきます。

幼少時に遊んだ川と水系は違えど、ここがずっと焦がれてきた「岩手の溪」であることを確信しましたな。

「あそこです。あの巻きには高確率で良いのが付いてます。さぁどうぞ!」

S氏とっておきのポイントを次々と示され打たせてもらいますが、どれほどお膳立てが完璧であろうとシッカリ空振るのがOssanの釣りでありますな・・・

水量は多すぎず少なすぎず。落ち込みや開きがリズム良く連続し、随所に美味しそうな巻きやポケット、合流によるヨレなどが存在しています。

気合いの高速メンディングを惜しみなく繰り出し、それらの全てを「今か!イマか!?」と血圧も高めに維持しつつ打っていきますが、反応は薄いようなのです。

しかもせっかく反応があってもすっぽ抜けたり、バラしてみたり・・どうにもリズムが合わないようなのでありました。

こりゃイカンですな。

昨年から今日まで、一体どれほど夢と期待を膨らませ、どれほどコストやエネルギーも費やし準備してきたというのか・・・!!

連休を取ることすら難しい自身にとって、この遠征が今年最大のイベントとなるはずなのであります。

それがノーフィッシュのまま、早くも昼を過ぎようとしているのであります。

込み上げてくる焦燥をなんとかうっちゃりつつ遡っていくと、蜻蛉の飛翔が見られるようになってきましたな。

良い水色ですな

あっ・・!

そろそろ気温も上がって虫っ気も出て、魚たちの動きも良くなってくるはずじゃないかなぁ・・・等と考えていると、Sさんの進んでいる対岸先で小さなライズが起こりました。

落ち込みの肩から1mほど先に、20数センチと思える良さそうな岩魚が定位して、やる気満々で流下物を待ち構えているのが見えましたな。

自身との間の岩には草つきがあり、角度や距離を考えても高確率でフライを引っ掛けてしまいそうです。ポイント上にはオーバーハングした木の枝と、此方の後方にもバックキャストを邪魔する木立があります。

そうかと言って、フライのキャストとドリフトに有利な立ち位置まで進もうとすれば、きっと岩魚はこちらに気づいて走ってしまうでしょう。

「ライズした! その岩の先に居ますよ!」

Sさんからは大岩の影で見えなかったでしょうが、同様に岩魚からもSさんは見えないはずですな。

タイトなループでオーバーハングを躱し、70㌢〜1m弱のドリフトを実現するティペットコントロールを入れられれば、92%の確率で食ってくるはずであります。

Sさんは川音で掻き消されがちであるはずの情報を受け取ると、徐に相棒のUDAロッドを振りました。

トルクフルなシルクラインの軌跡は澱むことなく、以前目にした時と寸分違わぬ感銘をワタクシヘと与えつつ、シャープかつ柔らかにフライを魚の鼻先数十センチに送り込みましたな。

木々に絡むトラブルを嫌ってどんどん短くなってきていた自身のリーダー&ティペットでは、ポイントにフライを捩じ込むことは出来たとしても、すぐに魚の追いきれないドラッグを発生してしまったことでありましょう。

自分より圧倒的に長いはずのシステムが、なぜあのように正確にコントロールされるのか。しかもなぜあのように力を感じさせず投射されるのか。

Ossanには未だ理解不能なのであります・・・

「ヨシ、食った!」

ゆっくりと浮上し疑いなくフライを捉えた岩魚は、定位していたレンジへゆっくり戻ろうとします。

ホントに上手い人って、決めるところで決めるんですヨ・・・

ピシッ・・・!

ワタクシの右手がエアー合わせでピクリと動くと同時に、Sさんの合わせが入りましたな!

岩魚の色彩と光が水中で明滅し、業物バンブーロッドが凛とした弧を描きます。

魚の挙動を含めその一部始終を目撃していたワタクシは、まるで自分が釣ったような快感を覚えておりましたな。

「ひゃあぁ〜やりましたね! キモチイィ〜!」

「・・って僕が釣ってどうするんですかw そろそろちゃんと釣ってくださいよ!」

「あ・・・ハイ^^;」

全く釣れていないわけではないのです。かわいいなぁ・・・

そうは言ってもですね、既にワタクシは大分満足しておったのでありました。

思い通りとまではいかないまでも、ポツリポツリと反応はあり、写真を撮ろうとネットを使ってキャッチした魚に逃げられたり等はしておりましたのでナ。

全く手応えを得られていないワケでもないのですし、何より今身を置いているこの渓は、ず〜っと訪れたいと憧れてきた地なのであります。

これ以上無いという程の釣り日和にフライロッドを携え、木漏れ日の降り注ぐ夢のように美しい流れに立っています。

そして、明日も釣りができることが約束されているのです。

もしこのまま今日の釣りを終えることになって何か困るかと問われれば、ブログへUPするに足る魚の写真が撮れていない事だけだったのでありましたな。

熊の情報もあって、ソロではちょっと怖いかも^^;

そんな風にヨタヨタしていると、いよいよ退渓地点が近くなってきたようでありました。

なんとかワタクシに良い魚を釣らせようと先行してくれていたSさんが、古びた橋の上で流れを指さしています。

広げた手の間隔から推し量るに、覚悟を決めて対峙しないと失礼なサイズのようでありました。

どうやらこの渓でのラストチャンスですな。

まどろっこしい思いをさせてしまう事を承知で、フライをCDCダンへ結び変えました。

その効き目に疑いはないものの、フロータント処理の手間を嫌って、釣り上がりでは中々登用しないフライでありますな。

しかしこのような「一撃必殺」を求められるシチュエーションもあるので、ボックスから無くす訳にもいかないフライパターンであります。

幸いティペットを食われそうな障害物はなく、浅めの流れにヨレはありつつも泡立ちのない、比較的ひらけたポイントでありました。

こういった場所では魚に気づかれてしまうことも多く、下流側から身を低くしてにじり寄る必要があるのですな。

少しだけ伸ばしたティペットの先端数フィートにはフロータントを塗り、かつて幾度も悔しい思いをしてきたフックの結び目の確認も済ませました。

不安があるとすれば、この日初めて使用することにしたリールにラインが絡みがちであることだけでありましたな。

逆U字となったティペットが自然なドリフト距離を稼いでくれるのを期待して、バック・サイド気味のキャストを放ちます。

かなり以前に巻いたフライが水面で理想的な浮き姿勢となってくれたか迄は、どうせ見えていないので運任せなのではありますが・・・

「ヨシっ!」

橋上からの声と同時に水面が弾けます。

水面に突き刺さるラインの先で、魚が首を振るのがわかります。

下流へ向かって突進しようとする魚の抵抗力を、ロッドのグリップ内までがしなやかに機能し吸収していることを感じます。

指の先端から脳幹へグイグイ切り込んでくるその官能と、忙しなく滑らかに追従するロッドベンド・・・

今日一番の魚であることを瞬時に理解しましたな。

うわぁ・・これはバラせないよな〜;;

散々好き勝手な釣りをさせてもらい、時は既に14時を大きく回っておるのです。

「おめでとうございます!」・・・釣り始めにかけられたプレッシャーの言葉も脳裏へチラついておりましたなw

ここでヘマを仕出かすような事があっては、あんまりにお粗末と申しますか、Ossanらしすぎると申しますか・・・

当日は私もバンブーロッドを使用しておりました。ネットは長径26cmのカムパネラ。岩手へ里帰りでありますなw

慎重を期したファイトの末にキャッチした獲物は、精悍な面持ちの25センチほどの岩魚でありましたな。

橙や黄の斑点のない体色は果たしてエゾイワナでありましょうか? ここまで遥々やって来た甲斐のある、胸の透くヒットとなりました。

カッパを釣るには「カッパ捕獲許可証@¥220」が必要でありますw

またも時間一杯のお預けを食らってしまいましたが、ワタクシにとって間違いなくメモリアル・フィッシュとなるであろう魚を釣ることが出来たのでしたな。

林道へ這い上がり、すっかり忘れられていた昼食を食べることにしました。

「いや良かったですね〜!まぁ僕が見つけたので、あれはボクの魚ですけどネ!」

「それを言うなら昼のアレはワタクシの魚ですナ!」

「わはははwww」

コンビニで買ってきたコッペパンを頬張りコーヒーを啜っている最中も、木々の間を渡ってくる風の中には懐かしい気配を感じます。

翌日も良い釣りとなることを確信しておりましたな。

想像を軽々と超えた素晴らしい環境の中で、宿願であったフライ・フィッシングを行うことが出来ました。

この地は物語からも読み取れるように、実は厳しい土地でもあるのですな。

とは言え、良い季節にだけ訪れる呑気なフライ・フィッシャーに、なかなかの釣果を与えてくれる気前良さも持ち合わせているようであります。

遠野の里は、すっかり夏を迎える準備を終えているように感じられましたな。

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コメント

  1. sasuraiflyfisher より:

    ご無沙汰しております。
    岩手の渓は美しく、そこに立てただけでも物語の一部になった気分にさせてくれます。
    今回のブログを拝読し、長期休暇が叶ったら、また岩手方面への遠征に行きたい気持ちになりました。

  2. OSSAN より:

    sasuraiflyfisher さま、こんにちわ。
    どこもかしこも、本当に美しい渓でありました。
    フライフィッシングを始めた初期の頃から、いつかは岩手県で釣りたいものと考えておりました。
    今回ようやくそれが叶ったのですが、ある意味フライフィッシャーの憧れの地と言える場所となっていることがなんとなく理解できたような気がします。
    また訪れることができる時は、もう少し小さな町か村の民宿へ泊まってみようと考えています。

  3. SHIMA より:

    SHIMAです。早いもので1月過ぎてしまいましたね。こちらは大増水です。盛岡市内を流れる北上川も中津川も相当な水勢ですが、中でも中津川は中州も河原も消えるほどの水量になってました。秋田の様子を見に行きたかったのですが、被害が大きかった様なのでそのうち機会をみて行ってみます。シーズンの残りの釣行の安全を。後半も楽しみにしています。では

  4. OSSAN より:

    SHIMAさま、こんばんわ。
    今年は方々で川の事故が多く心が痛みます。東北も特に秋田は記録的な大雨に見舞われたとのこと、今後のお出かけにもよくよくお気をつけください。
    後編はまだ三分の一も書き終えておらず、次回釣行前までには何とかしようと・・・
    それにしても、時の過ぎていくのが今年は特に早く感じています。あっという間にシーズンオフとなってしまいそうで、焦っております。