多くの河川で禁漁期が始まる10月が近づくと、
「今年の泊りがけ(キャンプ含む)釣行もお終いだな〜;;」
という寂しさに襲われます。
とは言っても、この後も管釣りに行く気満々なOSSANはそれほど焦っていないのでもありますな。
9月半ばにあったライド・イベント(後日UPします)を、とてもとても慌ただしく終えたOSSANは、更にドタバタと荷造りを済ませ、まだ暗い上信越道をブッ飛ばしましたな。
5月に完膚なきまでにやっつけられた、千曲川水系でリベンジを果たすためであります。
移動距離とスケジュール上、やむなく夜勤明けで輪行⇒ライドイベントで完全消耗⇒またもや連続夜勤&溜まった業務こなす⇒ストレスでつい高負荷ロードワーク⇒身体ガタガタで長野へ到着・・・。
台風17号の影響で雨にも降られそうでしたが、もうこの日しかチャンスが無かったのでありますな。
お盆休みをしっかり満喫してしまった小心者のOSSANは、これ以上有給を突っ込んで余裕あるスケジュールを組む勇気がなかったのでもあります。
ですが、来てしまえばコッチのものであります。
早朝の佐久市と隊長@tikuma_riverさんは、変わらず長閑に迎えてくれました。どうもホッとしてしまいます。
「いよいよあのデカ岩魚との再戦の日がやってきましたな!」
「あ・・・あれはもう釣って食べてしまいましたw」
「・・・・・」
「・・・・・」
そのような会話はありませんでしたが、来シーズンの計画も自然と出てきてしまうのは、この時期ならではのお楽しみであるのかも知れません。
思えばこの時期の釣りの経験は、エリアフィッシングのみでありますな。
何をしたら良いのか、見当がつきません。
勇んで降り立った千曲川の本流には、淡黄色の蜉蝣がポツリポツリと見つかるくらい。
ライズも無く、鉛色で柔らかそうな川面に冷たい雨が小孔を穿つのみ・・・。5月のような、あの喜びに満ちた雰囲気はありません。
深として、どこか来る冬の厳しさに身構えているように感じてしまいます。
#14のグリズリー・パラシュートで探っていきますが、モワッとした反応が一度きり。
以前ならば即ニンフやウェットフライのルースニングに切り替えるところでありますが、近頃はドライフライにこだわり気味です。
鱒が水面を割ってフライに襲いかかる、その瞬間が見たいのでありますな。
そんな中、隊長さんは数尾の山女魚を揚げておりましたが、サイズも寂しい様子。
自分に釣れないのはフライの違いなのか、また別の理由なのかなぁ・・・?
仕方なく支流へ。
「・・・これは・・・!」
「こんなところでも、来るときはガバっと出ますよ〜w」
正しく里中の支流なのでありますが、枯れかけた葦でしょうか?藪の折り重なる細い流れに大苦戦します。
継ぎ足していたティペットを、思い切り短くしてリーダー・フィッシングでありますな。
周囲の藪にフライを取られないよう細心の注意を払いますが、それでもアース・フッキングの連続で神経が持ちませんww
ここでも(マス類ではない可能性のある)小さな反応が数度あったのみでありました。
「ウ〜ム・・・やはり今日も釣れませんがwww」
「ウム。では次行ってみましょう。」
土地勘のないOSSANにはどこをどう走っているのか、サッパリわかりませんが随分標高を稼いだようであります。
これまで日差しも高揚も無く、回復し切れていない足腰の筋肉の疼痛が全身に広がり始めています。
どこもかしこも雨に濡れ陰鬱とした景色でありますが、風の強くないことが救いであります。
お昼にしましたな。林道に座り込んでお湯を沸かします。
滅多にこない、通り過ぎる車から見たらきっと、
「お、何だ何だ?ガス欠で遭難してるのか??」
と思わせる光景なのでありましょう。
スピードを緩めて通り過ぎていくのが面白くもあり、恥ずかしくもあり。
アラフィフのOSSANが山深い林道脇に座り込み、カップヌードル味噌味(税抜¥180)をかっこんでいます。
雨で味が薄まらないよう、急いで食べてしまわなければならないのが一寸惜しいです。
普段なら血圧を気にして決してしませんが、今日はスープもすべて飲んでしまいますな。
雨のなかでボソリ、呟くのであります。
「まったく、ウマイんだよなぁ・・・」
ここからは、準備していたカムパネラ・クラシックライト#3と、WF#2ラインの組み合わせを試すことにしました。
小さな渓流で、もう少し繊細なアプローチや、ラインの空中での保持性、ロッドパワーとの調和、疲労の軽減などを目論んでのことであります。
浸透したN川上流域は、なかなかに変化に富む渓相。
きっとここも初夏に訪れれば、濃密な気配に満たされたユートピアなのでありましょう。
刻々と時が過ぎていきます。
このままでは5月の二の舞なのでありますな。お腹もいっぱいになったことですし、もう一段階集中力を高めねばなりません。
ですが、「この渓で釣れる」とは思っていたのです。渓に降り立ってすぐ、フト魚の匂いがした気がしていましたな。
どうということのない流れの変化も見逃さず、#16エルクヘア・カディスで丁寧に探りつつ釣り上がっていきます。
行く先に、水面を遮る大きな岩が横たわっています。それより先の流れと足元の地質からして、水の当たる岩の下部は多少掘られて深く、魚の付き場になっている筈ですな。
そして魚からは見えない・・・。
岩の先へフライをキャスト。軽量なフライ・ラインの空中保持性というのは、こんな時にほしいのであります。
夕方のように暗く、時折梢から弾かれた大粒の雨がレインウェアを音立てて叩きます。
フライの流れる速度を頭の中でシミュレートし、「居ればココで喰う」と言うタイミングで軽い合わせを入れてみます。
ビイィイィンン・・・!!
朝から待ちわびていた、あの感触がようやくのことで訪れましたな。
半信半疑のフッキングですので、ネットに収まるまで慎重なやり取りに徹します。
26〜27センチ程でありましょうか?
橙色の斑紋と腹部が鮮やかな、精悍な顔つきの美しい岩魚でありました。
「やっと来ましたっ!!」
「やりましたね〜。しかも結構いいサイズ!」
雨と共に立ち込めていた沈鬱が、この瞬間に周囲の山を2つ3つ超え、遥か彼方に吹き飛ばされて行きました。
「スゲ〜綺麗っす・・・良かった。満足であります!」
「ハハ・・・まあまぁw」
川幅も狭く、バックキャストにも気を使わなくてはならない小渓流で、#2ラインとミディアムスローアクションの#3ロッドの組み合わせは正解でありましたな。
6Xリーダーとの組み合わせで、ライン自重が減っているので空中保持が楽です。水流への絡み方も軽くなります。
ウェイトフォワード・ラインをわざわざ選んだのは、コンパクトな振りでタイトなラインを飛ばしたいがためであり、コレもまぁうまくいくようです(もっと練習が必要ですが・・・)。
WFラインにしてはメンディング能力も及第点に収まっているようです。
そして、とにかくタックルが軽く感じ、おかしな力を入れなくて済むようになりました。
うまくラインの重さを乗せることができると、ロッドのパワーだけで
ヒョロヒョロヒョロ〜〜〜
と、#3ラインにそれほど遜色ない飛距離が出ます。
カムパネラ・クラシックライトの新たな表情が見えたようで、非常に気に入りましたな!
ウィークポイントとしては向かい風に弱いことと、ループキャストが難しくなること。
#14くらいまでの、空気抵抗の小さな軽量なフライまでしかカバー出来なさそうなことであります。
「ココや金峰山川、赤久縄ならこの組み合わせ。湯川やうらたんざわなら、Scottで#3かなぁ・・・。」
5㌢ほどの未来へ続く夢を数尾、大切に流れに返しながらアレコレ考えつつ釣り上がります。
ほどなく、そそり立つ堰堤下に出ましたな。
山奥によくある砂防堤です。完全な魚止めになってしまっていますな。
と、言うことは、そのプールには遡ってきた魚が確実にストックされている筈なのであります。
距離をとったままそっと腰を下ろし、水面を見つめながら少々芝居がかった一服を吸い付けました。
結んであるエルクヘア・カディスをそのまま投じる気にならなかったのであります。
羽虫は舞っていませんし、ライズも起こりません。それほど水深もないようです。
「ココ一番!」のシチュエーションであることは確かなのでありますが、実はワタクシ、このような堰堤がらみのポイントであまり良い思いをしたことが無いのでありますな・・・。
背後からは、朝からずっとガイドに徹してきてくれた隊長さんの無言の圧力と視線を感じます。
まさに今、本日のハイライト!と呼べるであろう時と場所を迎えているにも関わらず、OSSANが悠長にタバコを燻らせているのです。
もう絶対に、
ココで釣らなきゃ漢じゃねえぇ〜!!
と思ってるはずです。これは相当なプレッシャーなのであります。
観察していると、色々な意味で失敗の許されないポイントであることが分かってきてしまいましたなww
ニンフやソフトハックルに逃げたい気持ちをグッと抑え、迷い悩んでティペットへ結びつけたのは#16フック、タン・カラーのCDCで設えたオドリバエでありました。
タイイングを始めた最初期に巻いたもので、バランスもガタガタのものでありますな。
この渓では飛ぶ虫達も見ていないので理由なんかありません。単なるカンであります。
強いて言うならば、失敗できないポイントとタイミングで、CDCという失敗できないフライを敢えてチョイスし、
自身をさらに追い詰めていくスタイル
であります!
丁寧にCDCへBGR-001を塗りつけ、さらに念を入れてドライシェイクにも通します。
そのようにしたオドリバエ・フライは、幾度もの打ち返しにも耐えて良い浮き姿勢を保ち続けてくれています。
ラインで魚を警戒させないよう、手前から順にポイントを塗りつぶすように流していきます。
チョボっ・・・
ぅし!
「ああぁ・・・(釣れて)よかったぁ〜;;」
「おめでとうございます!」
周囲の深い森を全身に映し、なお静かな力を控えめな色彩に発露する。
山女魚の華やぎと比較して、岩魚はともすると地味な存在とされることも多いように感じます。
でも頓狂で愛すべき表情と、よくよく見つめなければ気付けない、複雑な美しさを持つこの岩魚という魚が大好きなのでありますな!
自然渓流での今シーズンの釣りは、この一尾が深みに駆け込んでいく時に終了しましたな。
「ありがとう。また来年!」
この後も真っ暗になるまで釣りを続けましたが、もうすっかり満足していたのであります。
ガタガタ、ヨタヨタの心と身体へ鞭打って。
来てみれば雨の中、急斜面を降りたり登ったり滑ったり。
見えない針穴と通らない糸に、イライラと焦って草臥れてようやく数尾。
数もサイズも出なかった。
なのに、こんなにも嬉しく気持ちが晴れるのであります。
しばらくは身体の復調に集中するだけで良いのです。
それだけの効力が、フライ・フィッシングと言う不思議な釣りにはあるのでありますな。
今回もすっかりお世話になり、良い釣りを楽しませて頂きありがとうございました!
次に伺う日はどんな渓と魚達が顔を見せてくれるでしょう?
「片道3時間もわりとイケるじゃん・・・。」
来シーズンのスケジュールを薄っすらと考え始めた、夜長月も終わりであります。