ラバーソールのウェーディング・シューズを試したい!
と考えて新たなブーツを手に入れ、昨シーズンをそれで過ごしましたな。
その印象や考えたことを書き留めておくのであります。
色々思うところありまして、ラバーソールの具合とブーツのインプレッションは分けて記したほうが良いのではないかと感じたので、そのように書いていきますな。
まずラバーソールについてでありますが・・・
前提条件として、恐らくは‘18〜‘19年に製造されたビブラム社製の IDROGRIPというソールについてであるとご承知おきくださいな。
製造年まで気にかける必要性があるのかというと、シューズを手に入れた際のエピソードでも触れましたが、同じシムスであってもモデルによってフリクションの感触が異なったということがあります。
ビブラム社が年毎にコンパウンド配合をUPDATEすることも、SIMMS社側が仕様変更を注文することも自然なことだと思いますな。
ですので、現行流通商品が我が手元のブーツのソールとは少々異なる可能性があることも、頭の片隅に置いて置いていただきたいのであります。
当然に、他社製ラバーソールとも性能差があると考えるのが普通だとも考えておるところでありますな。
で、
滑るのか、滑らないのか?
結論から言うと滑りますな。
乱暴な書き方をしてしまうと、一般的なトレッキングブーツに採用されているソールに比べ、耐久性と引き換えにそのグリップ力を3〜5割り増しで引き出しているのでは・・・くらいの(あくまで個人的な)感覚であります。
とは言っても、所詮はその程度であるとも言えるのですな。
ヌル等の存在する河床や、水中の沈倒木などを踏んでしまうと股関節が悲鳴を上げるくらいには滑ります。
このグリップ力だけで釣りができるのは、峻烈な山岳渓流のような場所だけではないかと思います。
滅多なことで水中に立ち込まない前提であれば、フラットな里川や歩行距離の長い中流域でも良いかもしれません。
しかしそのような流域において、ヌメリの少ない貧栄養河川というのも国内ではとても少ないのではないかと思いますな。
幾重もの巨岩を陽光が眩しく照らし、清透なスピリッツに例えられるような流れの水際に立ち込んでも、足元にはしみったれた藻の一つも生えていない・・・!
そんなフィールドであれば、このラバーソールのみでも釣りになると思いますな。
ただし
ハードバイト・スタークリートというスパイクを装着すると、さまざまな条件でフェルトソールより滑らなくなります。
この効果はまさに絶大であります。
あると無いとでは雲泥の差があります。
やはりキーとなるのは藻やヌル、コケや落ち葉と言った、足元の着生・付着・体積物の存在なのでありますな。
イドロ・グリップソールが持つベースのグリップ力に、硬質な金属製クリートの突破力が付加されます。
限界(厚みのある水草のベッドなど)はあるでしょうが、藻やヌルがあったとしてもそれを突き破り、その下の安定した岩などに引っかかってくれるのであります。
このクリートを装着したラバーソールのアドバンテージは、林道からのアプローチである急斜面や高巻き、敢えて倒木を踏んで進まなければならない場面などで、フェルトソールの比ではありませんでしたな。
SIMMSオリジナルソールとハードバイト・スタークリートの組み合わせは、他社にはない武器であると言えそうであります。
惜しむらくはその高価なことでありますな。
靴底に500円硬貨を数枚も貼り付けているようなモンですし、それが往々にして脱落・紛失するのですからたまりません;;
が、これ無しでの運用はチョット考えられないのであります。
油断大敵
そのコンビも、残念ながら万能では無いですな。
これまでに判明している弱点は、たまに渓で見かける、那智黒石を大きくしたような黒い岩であります。
着生物が他の岩と比べて明らかに少ない傾向があるようなので見分けるのは容易でありますが、コレがどうしようもなく滑ります。
表面が滑らかなことと、おそらくは硬度の高さ故か、イドロ・グリップソールもクリートの突破力も効かないのでありますな。
表面が碁石のようにツルツルで、あまり藻類も付着していない岩
と言う条件では、この黒い岩に限らず茶褐色や緑褐色の岩も滑りました。
足を置くべき水中の岩はよくよく選別し、気をつけねばなりませんな。
岩へ飛び移ったりなど、イチかバチか的な動作では盛大にコケて落水する危険性が高まります。
フェルトシューズに戻して釣行していた際にもこれらの岩を見つけてはワザと乗ってみましたが、やはり滑りました。
しかしどちらかと言えば、これら特徴のある岩に関してはフェルトソールの方が滑りにくいと感じましたな。
似たような条件では「平滑なコンクリ護岸斜面」もグリップが効きにくく、苦手なシチュエーションであります。
ソール自体の柔軟性について
これはラバーとフェルトの素材の違いも大きいでしょうが、ブーツそのものの設計思想が影響しているのではと推測しております。
そのためにチョットだけ脱線しますw
国内のフィッシングシーンにおけるウェーディング装備事情を見渡すと、
① 草履・足袋・脚絆の3点セットをイメージする軽装備。
② 皮革を用いたワークブーツが根底にあると思われる欧米的重装備
と、大分類できるように感じておるのですな。
① はライト&ミニマルなウェットウェーディング装備や沢登り系足拵えに進化していると言え、②の潮流はウェーダー+ウェーディング・ブーツで行う、一般的なフライフィッシングのイメージに繋がっていくように(勝手にw)考えております。
(ブーツフット・スタイルは、②にカテゴライズされるのではと思っております。)
現代日本では双方がミックスされ、さらに個別のフィールド環境や嗜好に合わせてローカライズ、細分化している最中と言える気もしていますな。
ラバー、フェルト両ソールに対する各メーカーの料理法(?)へも、この分類は当てはまるように思います。
海外メーカー製のブーツは重厚な印象のラインUPが目立ち、SIMMSのフラグシップに据えられるG4やG3ブーツなんて完全にガンダムです。
見た目通り、重量級でもあります。
手で抉ったくらいでは、それらのソールは全く撓むこともなく、足首から先はガッチリと固定され可動域は比較的少ないです(そこまでではないモデルもありますけどネ。)
一方、FoxFireやリトプレ等の日本メーカーのシューズは、軽量に作られていることが多いようです。
そしてそれらのソールは、ラバーソールであっても比較的柔軟性を持たせたものが多いようであります。
アッパー部も含め、複雑な足の動きに追従しやすく造ることが、半ばセオリーとなっているように感じますな。
そのような設計思想的な相違は、路面に対するグリップ(ソールのフリクション)の稼ぎ方にも影響を与えているようにも思えます。
フェルト、ラバー両方において、
① ソールを柔軟にすることで良好な運動性と広い接地面を稼ぎ、素材のもつ摩擦係数を最大限に発揮させよう。
② 耐久性や疲れにくさを考えたらソールは硬い方が有利だ。不足するフリクションはソールパターンの工夫やスパイクを利用してなんとかしよう。何だったら新素材も開発しちゃうし。
というような、考え方の違いを感じるのでありますな。
どんどん長くなりますし、実は全く見当ハズレかも知れない素人の考察に過ぎませんのでこの辺にしておきますな。
様々なシューズを店頭でいじり倒し、時には試着してきた末、そんなふうに考えておるところであります。
今回取り上げているソールは言わずもがな、②の分類にあたるモノでありますな。
では、昨シーズンに出かけた渓流において、このVibram IDROGRIPのような比較的硬質なラバー・ソール使用によるメリット、デメリットは端的に如何様なものであったのか?
まずメリットは・・・
- 地面からのインパクトが和らぐので安心感がある
- 足の筋肉群の働きを抑制するため疲労感の軽減につながる
- 柔らかい斜面であれば昇降時ともにキックステップを作るのが容易
- グリップさえ効けば支点が小さくても姿勢を安定させやすい
- 良くも悪くも普段のシューズと感覚が近い
などが挙げられます。
一方デメリットは
- ソールの接触面積が減少するのでフリクションを稼ぐには不利となる
- 岩盤などでフラットステップが出来ないほどの斜度となると、小さなエッジなどに頼らざるを得ず、踏み外すリスクは高くなる。
- 足裏から伝わる情報が希薄になる
- スリップを始めた瞬後のリカバリーが難しい
- 足に合う、合わないの相性が出る可能性が高まる
などでありましょうか。
有りか無しか
以上の経験と考察を踏まえ、OSSANの使用状況においては
イドログリップソール+ハードバイト・スタークリーツ>(手持ちの)フェルトソール>>イドログリップのみ
の順で快適である。
と言う結論に至ったのでありますな。
ここからは Head Waters BOA ブーツについてであります。
このブーツを手に入れた主な動機がラバーソールでありますので、その辺をうまく避けつつ前エントリに沿ったインプレをしますと・・・
BOA レーシング・システム
脱ぎ履きの楽チンさは予想通り、非常に快適でありますな。
締め付けるのも緩めるのも片手でできるので、キツい前屈の必要がありません。
日頃の不摂生による柔軟性の減少や腹囲の増大に悩むOSSANには、大変に助かるシステムなのであります。
使用中に多少緩む感覚がありますが、増し締めも簡単であります。
細かい締め付け具合の調整ができないことに関する心配も全くの杞憂でありました。
厚いライニングによって足全体に均一な固定力が得られ、とても履き心地が良いのですな。非常に良く考えて製作されているブーツであります。
耐久性に関してはまだわかりませんが、BOAリール部のプラスチックパーツの方に不安がありますな。
すでに片方のカバーが外れ脱落しております。
今のところ機能に問題は出ていないのでそのままにしております。
サイズ&ブーツの形状
コレも目論見通りでありました。
ウェーダー着用時、ウェット・ウェーディング時ともに、無難なサイズを選択できたと思います。
アッパーから踝まで、不安の無い防御性とサポート力を発揮してくれましたな。
特に踝に関しては、BOAレースをしっかり締め込んでおくと、1日の釣りを終えたあとの足首の疲労感が格段に軽減しているのを実感できました。
バランスの良い深めのミッドカットによって、足首を捻ってしまうことへの不安はほぼ無くなりましたな。
全体的に「包まれ感」の強い履き心地ですが、しゃがみ込むような動作に対しての追従性もなんとか及第点に収まっていると思います。
分厚く見えるライニングの柔軟性まで併せて設計することで、この履き心地を実現しているのでしょうな。
ブーツ自体のボリュームが大きいので、ウェットウェーディング・スパッツとの相性はあまり良くありませんでした。
足首の開口部をスパッツで覆うのは、感覚的にギリギリでありましたな。
構造&材質
このブーツの決定的かつ最大の欠点でありますな。
アッパー素材自体は水を含みにくいのかもしれませんし、質感も良いものであります。
その代わり、たっぷりと保水した分厚く心地よいライニングは、その皮革に邪魔されて水を逃がし難くなっているようなのであります。
そしてその水を外部へ排出する水抜き穴が、土踏まず部分にしかないのでありますな。
多少は他の部分からも排水しているのでしょうが、流れから足を引き抜くときにはモノスゴイ重量感を感じずにはおれないのであります。
水に濡れるとしばらくの間、
とんでもなく重い!!
(濡れてなくても重いんですが)
と言うことであります・・・
歩行中も水の抜けてゆく速度が遅いことをしっかり感じられるほどなのでありますな。
このブーツのコンセプトとOSSANの求める理想に乖離があったと言うことでありましょうが、この一点を持って「とても良くできたブーツだけど、リピートすることは無いな」と思わせたのであります。
足腰に自信のある向きには、その造りや予想できる耐久性からしても良い選択肢となりましょう。
しかし、なけなしの体力と財力と休日とを振り絞り、息も絶え絶えとなりつつ渓魚たちとの邂逅を希求する・・・
色んな意味でギリギリな、アラフィフ・アングラーであるワタクシには不向きであると言わざるを得ません。
この重量によって疲労感がどのように変化するかを具体的に申しますと・・・
コンターライン・シューズで1日を終えると、疲労感は足首に集中しました。
一方このヘッドウォーターでは、大腿四頭筋・前脛骨筋の疲労が顕著であります。
サボり気味とはいえ、これらの筋肉群はロードバイクでも良く使われるにもかかわらず・・・でありますよ?
落差の激しい岩を乗り越え続けるのにも限界が早くなりますし、そんなところで足を縺れさせでもしたら、それこそ帰って来れなくなってしまうかも知れないのであります。
ですが気力・体力ともに充実していることを前提に、更にストイックさを発揮できるのであれば、このブーツにそれ以外の弱点も見つけられないことから
鉄ゲタとして足腰を鍛えるためにも使えるwww
とも言えるのでありますな。
しばらくこのブーツを使い続けたのちに、コンターラインに戻して釣行した際の身体の軽快感は素晴らしいものがありました。
海外メーカーの重量級ウェーディングブーツは、ゆったりと流れているようでその実ものすごい水圧を持つ本流系河川や、湖等に向いているかも知れませんな。
ヘッドウォーター(源流)と銘打っていたとしても、我が国の急峻な山岳渓流で使用するにはあまり向いていないと思います。
冷静に考えてみればあたりまえなのかも知れませんが、まぁ使えないことはないので後悔はしておりません。
あ、それと余談ですが、使用後に完全乾燥させるのに、天候や気温にもよりますが陰干しで2〜3日かかります。
さて。
ラバーソール・ウェーディングに関する考察と、Head Waters bootsのインプレを分けて書いてきました。
混ぜてみますな。
結論
ウェーディングシューズに対して抱いていた不満点は、Head Waters Boa boots(Vibram)を導入することによって
重量感以外は解消
されました。
昨シーズンの使用環境において、フェルトソールの優位性を感じたのは特定種類の岩の上でのグリップ力のみであります。
その小さな妥協を受け入れ、重量と水抜けとコスパの悪さに目を瞑ることで得られたものは、
- アプローチ、高巻き等傾斜地での圧倒的なグリップ力の差による安心感
- 水中以外での行動全般の違和感の少なさ
- 長距離歩行時の疲労感の少なさ
- 砂礫の付着も解消されやすいことによるグリップ力変化の少なさ故の安心感
など非常に好ましく、求めていたものでありました。
これからの使い分けをザックリ想像してみると
- 軽快感・運動性重視→FoxFire・コンターライン(フェルトソールシューズ)
- 安定感・安全性重視→SIMMS・Head Water boots (ラバーソール+クリーツ)
という感じになっていきそうでありますな。
双方、できるだけ長持ちして欲しいものであります。